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本試験予想・分析情報
2001年本試験情報 外務専門職出題論点予想・国際法

 外務専門職・国際法の試験委員である小寺彰教授が『法学教室』で「パラダイム国際法」という連載を始めた。法源論について独特な議論を展開されているため、緊急に追加予想論点とその骨子を「国際法インサイト」番外編としてお知らせしたい。外専受講生は各自、『法学教室』の同記事を手に入れ、検討してほしい。(杉原)

問 国際裁判所が法の欠缺に気づいた場合、それをどのように克服するか。
1.法の欠缺とは
 →狭義と広義の意味につき記す。
2.国際法の欠缺が生じる理由
 →新たな状況に対する法定立が追いつかず。
3.国際裁判所の裁判官が法の欠缺に気づいた場合に、それをいかに克服するか。
 (1)ICJ規程38条1項と2項の意味
 (2)各工夫
  A. 対抗力の判断に留める
   Ex.ノルウェー漁業事件判決/アイスランド漁業管轄権事件判決
  B. 法の一般原則に依拠して、国家の一般的自由の推定を否定する
  C. 法の欠缺を正面から認めて、裁判不能を宣言する
   Ex.核兵器使用合法性勧告的意見

問 武力不行使の原則について国際法は完全に規律していると言えるか。
・無差別戦争観の時代―戦争の開始原因は、長らく法外(extra-legal)要因

・連盟規約・不戦条約は一定の戦争を禁止する対象とした。

・国連憲章
2条4項 武力行使禁止原則
明文の例外 51条、39条、42条、53条のみ

この例外は、すべての例外を規定した網羅的なものか?
・1999年NATOによるユーゴ空爆の評価
憲章違反説→憲章の実効性の欠如
 人道的干渉説→国際法上未成熟の概念
 英国政府の見解
  「NATO軍の行動は、国連憲章2条4項の例外として許容される」。
・小寺説…武力行使については法の欠缺があり、一般原則があっても、例外規則は、現行法上網羅的に発見できない。

問 「不法から法は生じない」原則と国際法の関係について例を挙げて検討せよ
I.国内法上の場合
II.国際法ではどうか?
国際法上重大な違法行為について、その有効性、さらにその行為の結果生まれた状態の有効性を他国に主張できるか?
1.戦間期のイタリアのエチオピア併合について
2.武力行使禁止原則以降
南ローデシアの一方的独立に対する安保理不承認決議
3.不承認は、違法行為の結果のすべてを否認しうるのか?
Ex.イスラエルによるパレスチナ地域占領の効果
 事実上の承認や未承認国の渉外事務の処理の効果

問 国際法の法源としての「国際法の原則」の意義について論じなさい。
I.ICJ規程38条1項cの「文明国が認めた法の一般原則」の意味
1.PCIJ規程起草時の意図
2.問題提起
今日でも、その意味は「諸国の(国内法上の)共通原則」に尽きるか?
(1)起草過程に依拠して国内法上の原則に限定する説(田畑・山本等)
→条約法条約の解釈基準32条と31条による批判。
(2)小寺説→法体系に内在する基本原則や国際法の原則も含むという視点を提示

II.国際裁判における法原則
  法規則(rule)と法原則(principle)の意味
1.法の基本原則
  Ex.ホルジョウ工場事件PCIJ判決)
2.国際法の原則(国際法の一般原則)
(1) 国籍―ノッテボーム事件判決
真正結合理論の背後に「国際法の原則」があるという。
  (2)大陸棚
   @北海大陸棚事件判決(1969)
    大陸棚概念に固有の制度として、自然延長論が「国際法の原則」だとする。
   But国連海洋法条約(1982)による定義の変更
  Aリビア・マルタ大陸棚事件判決(1984)
   関連事情として、自然延長論が含まれないことを示す。
  (3)小括

III.法源論における「国際法の原則」の意義
・一般国際法の主な法源は国際慣習法だけではない。国際法を、アドホックに生成する法規則を帰納的に総合したものと捉えるのは正しくない。
・国際法が体系性を保っているのは、国際法上の制度趣旨を定式化する「国際法の原則」が機能しているからである。

<参考文献>
小寺彰「一般国際法の世界―法の欠缺と『不法から法は生じない』
―パラダイム国際法(第2回)」『法学教室』248号(2001年5月、有斐閣)
小寺彰「国際法の法源―「国際法の原則」の意義
―パラダイム国際法(第3回)」『法学教室』249号(2001年6月、有斐閣)
小寺彰「法の欠缺―国際法は完全か」『国際法キーワード』(有斐閣)pp.40-43
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