第1問 土地利用に対する規制のあり方をめぐって生ずる憲法上の問題点について、具体的事例をあげながら論ぜよ。
<解答のポイント>
1.財産権(29条)に関する出題は、外務専門職では平成4年(1992年)以来なかった。その時は、損失補償の一環として問われたので、本問のように財産権について問われる可能性が非常に高かった。
2.本問では「土地利用に対する規制のあり方」が問われている。財産権に関する憲法上の問題点の中から、「土地利用に対する規制」に関する具体的事例をあげながら論ずればよい。具体的事例としては最高裁の判例がベストである。その際、最高裁の判例を中心に論じてもよい。しかし、条文の解釈に具体的事例を盛り込みながら通説を中心に論じたほうが論点落ちも少なく無難である。
3.本問は、ペ−スメーカー論文答練第2回目第3問、外交官論文答練第5回目第2問・第6回目第1問の類題である。
第2問 国会法と議院規則との関係について、その所管事項及び効力関係の問題を中心に論じなさい。
1.本問は大石先生の関心の高い論点で、平成7年度京大院試でも「国会法と議院規則との関係について、所轄事項・効力を中心に考察せよ。」という出題がなされていた。また、渋谷先生も『法学教室』の演習で本問後段を論じられている。
2.本問では、指定どおり所管事項と効力関係を分けて論ずること。所管事項では、競合管轄説(従来の通説)だけだと出題意図から外れる。規則専属説か折衷説が望ましい。競合管轄説は参議院の自律性を損なうからである。効力関係でも、法律優位説(従来の通説)だけだと出題意図から外れる。規則優位説か折衷説が望ましい。法律優位説は参議院の自律性を損なうからである。ちなみに、試験委員の大石先生は、参議院の自律性を重視し、規則専属説と規則優位説を採っている。また、同じく試験委員の渋谷先生も競合管轄説と法律優位説に批判的である(『法学教室』2000.6−No.237p148)。
3.大石先生は、「議院自律権とは、議院の憲法上独立した地位に由来する、その内部準則に関する自由な決定権を総称するものである。それは、組織自律権・運営自律権・財務自律権の三つを要素とするが、そのうち中核的な意義をもつのは、運営自律権を形づくる議院手続準則決定権である」とされている。したがって、まず議院の自律権の意義・根拠を論じ、そして次にこの自律権にとって規則制定権の持つ意義を述べ、これを踏まえた上で、国会を「唯一の立法機関」と定める憲法41条について検討し、法律(国会法)と議院規則との競合の有無(所管事項)、競合する場合の調整(効力関係)について論じていくとよい。
4.本問は、ペースメーカー論文答練第4回目第2問の類題で、外交官論文答練第2回目第3問でも的中している。
第3問 政党の日本国憲法における位置付け、機能及び問題点について論じなさい。
<解答のポイント>
1.外務専門職試験では、昭和61年(1986年)に「憲法と政党」が出題されて以来、政党に関する出題がなかった。また、政治改革の一環として、平成6年(1994年)に政党助成法が制定され、平成12年(2000年)には、国会法と公職選挙法の改正があった。したがって、本問の出題可能性は高く、ペースメーカー論文答練第4回目第3問とほぼ同一の問題となっている。
2.本問は誘導に従って素直に書けばよい。問題点は、「全国民の代表」(自由委任の原則)と党議拘束との関係、比例代表制によって選ばれた国会議員が党籍を変更した場合に議員資格を失わせることができるか、政党の処分と司法審査との問題、政党助成金・政治資金規正法の問題点、「戦う民主主義」を定める法律の制定の可否、党内民主主義を法律によって政党に強制できるか、等たくさんある。その中から2〜3を選んで、政党の機能との関連で論じていけばよい。
(渡辺一郎)
※解答例は7月7日(土)以降に早稲田外交官セミナー受講生に無料で配布される。 |