The Future [ HOME本試験予想・分析情報>2001年国 I 2次総合試験 問題とコメント ]
本試験予想・分析情報
2001年本試験情報 国 I 2次総合試験 問題とコメント

 [No.1]
 日本には博物館法(昭和26年12月1日法律第285号)の対象となるものだけでおよそ1,000の博物館(美術館、動物園、植物園等を含む。以下同じ。)があり、さらに、同法の対象にはならないが博物館と類似の事業を行っているものまで含めると約5,000の博物館があるといわれている。
 博物館は、一般に公開されている公共のための施設であるが、もともとは好事家の個人的な収集から始まり、珍しいもの、貴重なものを集めて展示する場であった。欧米では、伝統的に個人の基金や収集物に基づいて設立されているものが多いが、日本では、教育基本法(昭和22年3月31日法律第25号)第7条(社会教育)において、「国及び地方公共団体は、博物館等の施設の設置その他適当な方法によって教育の目的の実現に努めなければならない」と規定され、また、博物館法において国や地方公共団体による博物館への補助、指導等について規定されるなど、欧米に比べると公的な色彩をより強く帯びてきている。
 博物館のもっとも大きな役目は、資料を保存して展示することであるとされているが、近年はこうした役割にとどまらず、従来の博物館の枠を超えた活動が期待されている。
 そこで、博物館はこれまでどのような役割を果たしてきており、これからの社会ではどのような機能を担っていくべきかについて、以下の設問に答えよ。

(1)あなたは子どものことから博物館をどのように利用してきたか、あなたにとって博物館とはどんな場所であったかを振り返り、国民生活一般に博物館がどのような役割を果たしてきたと考えるかを述べなさい。

(2)様々なテクノロジーの発達、人々のライフスタイルの変化、地方分権に伴う特色ある地域づくりの動きなどによって、博物館の有する可能性は増大しているといえる。博物館は、これからの社会でどのような機能を果たす場所となるか、あなた自身の構想を述べなさい。

(3)(2)で述べた構想を実現するために、行政はどのように関与すべきか又は関与すべきでないか、具体的に述べなさい。
 [No.2]
 近年、日本の教育の在り方をめぐって様々な議論が起こっている。例えば、平成12年度『我が国の文教施策』(教育白書)では、次のような問題意識に立って、教育改革の必要性が指摘されている。

 我が国の教育は、第二次世界大戦後、生まれや家庭の収入、出身階層などに関わりなく能力、適性、意欲に応じて平等に教育の機会が保障されるべきという教育の機会均等の実現を基本理念として掲げ、教育を重んじる国民性や世界でも1、2を争う国民の所得水準の向上などともあいまって著しい普及を見、奇跡とも呼ばれるほどの我が国の発展の原動力となってきました。
 その一方で、少子化や核家族化、都市化の進展とともに、これまで子どもたちに対人関係のルールを教え、自己規律や共同の精神をはぐくみ、伝統文化を伝えるといった役割を担ってきた家庭や地域社会の「教育力」が著しく低下し、このことが、いじめや不登校、青少年の非行問題の深刻化などの様々な問題が生じる背景となっています。また、これまでの学校教育はどちらかと言えば、知識を一方的に教え込む教育に陥りがちであり、思考力や豊かな人間性をはぐくむ教育や活動がおろそかになっていました。それに加え、教育における機会の平等性を重視する余り、本来多様な子どもたち一人一人の個性や能力に応じた教育を行うという点に十分に配慮されてこなかったことなど、反省すべき点も少なくありません。

 また、最近では、小中学校における平成14年度からの新たな学習指導要領の実施に伴う学習内容の大幅な削減に関連し、ゆとり教育と子どもの学力について論議されている。
 以上の点を参考にしながら、以下の設問に答えよ。

(1)あなたが受けてきた教育を振り返り、あなた自身の体験あるいは周囲で起きた出来事を紹介しながら、日本の教育の問題点について述べなさい。

(2)(1)で指摘した問題点を含め、現在の日本の教育が抱える諸問題の解決のための方策の方向性及び具体
的な方法についてあなたの考えを述べなさい。なお、その際予想される反対意見や障害についても言及
し、その対応策も併せて述べなさい。
 <コメント>
 第1問はやや意外な出題だが、博物館の独立行政法人化が出題の背景にある。また、第2問目は教育改革・新学習指導要領が出題の背景にある。第1問は長谷川真理子早稲田大学教授、第2問は川本隆史東北大学教授の出題と思われる。しかし、結果的に2問とも文部科学省関係の出題となってしまった。1問選択である以上、出題分野が偏らないよう、事前の調整が求められる。
 ただ、いずれも、自己の経験・体験との結びつきでその社会的意義や問題点を指摘させ、行政の在り方・具体的政策までを問う良問である。理性的・論理的に書かれていれば、必ずしも現在の政府の政策に従う必要はない。対策としては、日頃から新聞などで取り上げられている重要論点について、自己の具体的体験から将来の政策を(反論に対する対応策も)考える訓練をしておくことが求められる。(渡辺)
©1999-2001 The Future