[No.2](必須問題)
保険業法第127条第7号は、内閣府令で定める場合について、保険会社に内閣総理大臣への届出義務を課しており、これを受けて、保険業法施行規則第85条第1項第19号は、届出義務のある場合の一つとして、保険会社又はその子会社において不祥事件が発生したことを挙げている。ここでいう不祥事件とは、保険会社の業務を遂行するに際しての詐欺、横領、背任その他の犯罪行為等である。この規定に基づいて保険会社が行政機関に提出した不詳事件報告書には、当該会社名のほか、不詳事件を起こした社員の職名、氏名、学歴、事故概要、発生期間、事故金額、事故の調査・解明の状況、事故の手口、事後措置、再発防止策、処分内容等が記載されている。
この不詳事件報告書の開示を求める請求が、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づいてなされた。この不詳事件報告書は、全部又は一部開示されるべきかについて、理由を付して説明しなさい。
[No.4](選択問題)
ある営業について規制する法律(以下、「規制法」という。)は、「この法律の施行に必要な限度において」、営業者に対して、その業務に関して資料の提供を求め、又は営業所に立ち入ることができると定めている。A県知事は、Xの営業活動に著しい法令違反を疑われる行為があるとの情報に基づいて、担当課の職員らに立入調査をするように命じた。担当職員らは、調査責任者であることを証する証票を携帯し、それをXに示した上で、営業所の立入調査を行った。その際に、Xの調査妨害とも思われる態度に対して、担当職員らはかなり高圧的な態度で接したため、調査自体に多少のトラブルはあったものの、調査は終了した。A県知事は、担当職員らの調査により収集した資料に基づいて、Xの営業活動が規制法に違反することを認定し、Xに対する営業許可取消処分をした。
これに対して、Xは、本件調査は事前の告知もなく、また、令状を所持することもなく、しかも高圧的な態度で行われた違法なものであり、このような違法な調査により収集した資料に基づいてなされた本件処分は違法であるとして、取消訴訟を提起した。
本件営業許可取消処分は違法かどうかについて論じなさい。
<コメント>
[No.2](必須問題)は、予想通り情報公開法からの出題であった。1次の教養試験・専門試験では情報公開法から全く出ておらず、論文試験での動向が注目されていた。ただ、条文を参照できないのは、受験生には辛い。しかし、原則=公開・例外=不開示であること、各項目がどちらに該当するか(部分開示となろう)、対立する利益を比較衡量しながら理由をしっかり書けばよい。
[No.5](選択問題)は、行政調査に憲法31条・35条の適用があるか、行政調査と行政処分との関係が問われている。行政調査と行政処分との関係について言えば、行政調査に重大な違法があれば行政処分も違法となるとするのが通説(塩野説)である。本問では、法律上は強制調査はできないが、調査に重大な違法があったとまではいえず、したがって処分は違法であるとは言えない事例であろう。
2問とも1次の勉強をしっかりしていれば、その延長線上で解ける問題である。地道だが、講義の予習・復習(特に後者)の段階で、指定されたテキストをしっかりと読むことが合格の鍵である。(渡辺)
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