【論点】
共有不動産の共有者一方の死亡後の利用関係【判旨】
「共有者は、共有物につき持分に応じた使用をすることができるにとどまり、他の共有者との協議を経ずに当然に共有物を単独で使用する権原を有するものではない。
しかし、共有者間の合意により共有者の一人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合には、右合意により単独使用を認められた共有者は、右合意が変更され、又は共有関係が解消されるまでの間は、共有物を単独で使用することができ、右使用による利益について他の共有者に対して不当利得返還義務を負わないものと解される。
そして、内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当である。
けだし、右のような両者の関係及び共有不動産の使用状況からすると、一方が死亡した場合に残された内縁の配偶者に共有不動産の全面的な使用権を与えて従前と同一の目的、態様の不動産の無償使用を継続させることが両者の通常の意思に合致するといえるからである。」
【判例のポイント】
1.共有者は、「持分」に応じた使用をすることができるにとどまり、当然に共有物を「単独」で使用する権原を有するものではない。
2.共有者間の合意で、共有物の単独使用を認められた共有者は、使用による利益について他の共有者に対して「不当利得」返還義務を負わない。
3.内縁の夫婦が、共有不動産を居住・共同事業のために共同使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、一方の死亡後は他方が不動産を「単独で使用使用する旨の合意」が成立していたものと推認する。
【ワンポイントレッスン】
不動産を共有する内縁夫婦の、死亡した夫=X、妻=Yとする。
Xの生前に、Yの単独使用につき合意し、書面(証拠)でも残していればno
problemなのだが、そうではなかった今回のケースでは、
1.Xの相続人が、Yの単独使用を否定して、明渡し請求することができるか?
2.Yの単独使用を前提として、Yの持分を越える使用について、Xの相続人は不当利得返還請求できるか?
という、問題がある。
1.について、最判昭41.5.19(判例六法・民法249条10番)は、共有持分の価格が過半数を超える者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対して当然にその明渡しを請求することができるものではない、と判示している。
2.について、本判決では、「単独使用の合意を推認」して、不当利得返還請求を否定した。この点がポイントである。
【試験対策上の注意点】
「共有物の利用関係」は、頻出論点なので、択一対策として、判例の立場をしっかり押さえておこう。