M君の官庁訪問日記
8時07分。人事院に到着。人事院は15時予約。早く来たのはいつものごとく1階ロビーでノートやパンフを入念に見直すためだ。今日は運輸省でも11時に予約が入っているし、会計検査院にも電話を入れなくてはならない。忙しいと同時に、運命の分かれ道になりそうな予感。ちょっとでもヘマすると切られてしまうのではないかという不安。官庁訪問1週目で面接慣れは十分した気もするが、それでもやはり緊張する。面接慣れしてきたときこそ、ボロが出るものだ。今まで何度となく言ってきた志望動機や司法試験への未練を聞かれたときの切り返し方を反芻する。そして、人事院を出る。
9時10分。運輸省に到着。11時予約だったので、こんなに早く行ってもしょうがないのだが、待合室にはいろんな人がいるのでしゃべっていれば時間も潰れるだろうと思って行ったのだ。待合室には9時予約組がいたが、徐々にどこかへ消えて行き、待合室も次第に閑散として来る。と同時に、11時予約組も集まり始める。
10時35分。友達から電話が来る。「10時予約の厚生労働省、速攻、切られた」と。官庁訪問2週目最初の月曜日に朝一番に呼ばれるのは、脈のある証拠だと思っていた僕は驚く。10時予約で10時半には切られてるって、それって切るためだけにわざわざ呼んだってことじゃないのか?
11時40分。名前が呼ばれる。また人事課面接だろうと思い、部屋にノックして入ると、1枚の紙切れを渡され、「この部屋に行って下さい」と。言われるままにその部屋まで行ってみると、すでに何人かがいる。「あー、これがうわさの拘束かー」と実感する。その中には9時予約組も若干いるが、多数派は11時予約組。「ここは、2軍部屋だな」とわかると同時に、「先週金曜日に面接官からの9時予約の申出を断らなければ、1軍部屋に行けたかもしれないのになあ。人事院の予約の時間が9時半から15時にずれることがもっと早くわかっていれば、運輸省を9時予約にできたのに!」と後悔する。「あー、もったいないことをしたー!」と思っても、後の祭り。運命の分かれ道は、金曜日に9時予約とするか11時予約とするかの分岐点に一つあったのだ。もっとも、9時予約なのにここ2軍部屋に来ることになった不幸な人もいる。彼らは「なぜ……」と、落胆した表情。
12時15分。2軍部屋の受付の職員から「食事に行きたい人は、受付番号を言ってから出て行って下さい。12時50分までに戻って来て下さい」と言われる。僕は、10時過ぎに売店で食事を買って来て待合室で食べたばかりだったので、お腹は空いていない。そこで、この部屋で待機することに。ただ、15時予約の人事院に行けるかどうかが不安になる。
12時35分。「パンを買って来ます。12時50分までには戻ります」と言って、2軍部屋を出る。無論パンなど買うつもりはない。運輸省の建物も出て、ダッシュで人事院に向かうためだ。これくらいの嘘なら許されるだろうと信じて。
12時45分。息を切らしつつ人事院に到着。人事課に行き、運輸省で拘束されているとういう現在の状況だけ伝える。すると、「今日でなくてもいいよ」と言われる。しかし、第1志望の人事院の面接であり、「無用な勘繰り」をされたくなかったので、「今日15時に予定通り伺うつもりなので、よろしくお願いします」と伝える。
12時50分。運輸省にぎりぎりセーフで到着。タクシーを使ったのだ。しかし、こうしてせっかく急いで来たにもかかわらず、一向に面接が始まる気配がない。時間だけが無駄に過ぎてゆく。そして15時が刻々と近づいて来る。そのうち、他省庁で予約が入っている受験生が事情を告げ、パラパラと消えて行く。そのやりとりを何気なく聞いていると、戻って来たければ戻って来てもいいとのことだ。それを聞いてちょっと安心する。
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