登場人物
D……国立大学法学部男子、国 l 1次合格・内々定あり
E……私立大学法学部女子、国 l 1次合格・内々定なし
T……教師
T もうじき国 l 2次試験の発表(8/11)ですが、D君、内々定はどうでしたか?
D おかげさまで、僕は1次発表前に何とか内々定まで漕ぎ着けました。
T それは、よかったですね。ところで、君と同じ省庁を希望していたF君(私立大学法学部男子、1次合格)はどうなりましたか?
D 彼は、なんとか1軍でがんばっていましたが、1次発表の直前に切られたようです。F君は、もう行く所がないとこぼしていました。
T それは、F君もショックでしょうね。結局、東大生を中心とする国立大に有利ではありませんでしたか?
D そう言えば、うちは東大生が内々定者の8割を占めています。
T そうですか。今年も内々定における東大生優位は変わりませんね。東大生と非東大生を区別する一種のダブル・スタンダード(二重の基準)が採られていると言っていいでしょう。私の記憶に間違いがなければよいのですが、近年、行政・法律・経済の3職種の合格者で東大の占める割合が3分の1なのに、行政・法律・経済の3職種の内定者で東大の占める割合は3分の2だったと思います。ちょうど国と地方の支出と税収の関係に似ています。
T では、Eさんは、内々定は、どうでしたか?
E 残念ながら私は、今も内々定をいただいておりません。面接が下手なせいもあるかもしれませんが、私には男子と女子のダブル・スタンダード(二重の基準)が採られているように思われるのですが?
T それは、否定できませんね。男子に優秀な人が少ないと女子を増やし、男子に優秀な人が多いと女子を減らすという補完関係にあります。また、女子の中でも東大生と非東大生を区別しているところもあります。なかには、美人か非美人かで区別しているところもあると聞きます。
E 本当ですか? そう言えば、私の第一志望省庁の場合、その基準を満たしています。
T この点は、民間もあまり変わらないのではないでしょうか。
T ところで、D君、人事院面接は、どうでしたか?
D なんとか、省庁の面接指導のおかげで、公僕意識を全面に打ち出し、なんとか無難に乗り切りました。
T それは、よかったですね。君の所は面接指導をやってくれるの?
D そうです。2回ほどやりました。もちろん、省庁によっては、やらない所もあります。
T 以前、君の省庁の先輩で「国民がどう思おうと、行政が正しいと思うことは、強力なリーダーシップをもった政治家のもとに推進すべきだ」と言って、2次で落とされた人がいたことを思い出します。翌年は、無事最終合格しましたが。心の中で思っていても、実際にこのようなことを言う人は、今年は君の所ではいなかったわけですね。
D いなかったと思います。
T では、Eさん、人事院面接は、どうでしたか?
E 私は、内々定をいただいておりませんので、「公務員になったら具体的に何がやりたいのか」と聞かれても困りました。また、「第一志望がメインなのか」と聞かれてもやはり内々定をいただいておりませんので、「必ずしもそうではない」と答えたら、苦笑いされてしまいました。
T 結局、内々定者は、「公務員になったら具体的に何がやりたいのか」確信をもって言えるのに対して、もらってない人は「公務員になったら具体的に何がやりたいのか」確信をもって言えないことになり、内々定者に有利、もらってない人に不利になっていますね。これでは、下手をすると、人事院面接は省庁別の個別面接の追認になりかねません。
E 先生の頃は、どうだったんでしょうか?
T 昭和50年代の中頃は、建前上は2次の合格発表(10月中旬)があってから、官庁訪問をすることになっていました。しかし、実際には、2次論文試験後の人事院面接(8月中旬)が終了してから、2〜3日休んで回る人でも早いくらい(フライング)でした。もちろん、建前上は2次の合格発表があってから、官庁訪問をすることになっていたので、その通りにしても内定がもらえる所もありました。2次から最終発表まで期間が長く、私のように途中で気が変わってしまう人も結構いたらしく、人事院面接では「本当に公務員になる気があるのか」しつこく聞かれました。2次の合格発表後も、面接カードに書いた志望官庁から資料が送られてきたり、他の省庁からも電話で勧誘があったり、今考えると、実にのんびりしていました。
E 結局、1次に合格していなければ官庁訪問はできなかった訳ですね。
T そうです。正確には、建前上は、2次に合格していなければ官庁訪問はできなかったのですが、事実上は1次に合格していればできたのです。それで、正直、「建前と本音」のギャップに悩みました。
E 現在のように、1次終了後、官庁訪問するのはどうでしょうか?
T 中央官庁としては、いろいろな学生を見られるという点ではメリットがありますが、全く合格する可能性のないバブル受験生にも対応しなければならず、業務が停滞するというデメリットもあります。少なくとも、1次合格発表・2次試験終了後でなければ官庁訪問はできないようにすべきです。一般受験生には、今年春に企画された「官庁訪問ツアー」で十分でしょう。民間との兼ね合いで、内定者を早く決めたいという気持ちはわかるのですが……。
E 今年の人事院面接はどう評価されますか?
T 結果を見ないとわかりませんが、先程、言いましたように省庁別の個別面接の追認になりかねません。人物重視が叫ばれ、人事院面接の配点が高いと更に問題です。一括採用が主張される時代に各省庁別の個別採用を促進する結果となるというのでは、感心できません。一説には、人事院面接が2次の配点で6割を占めるとも言われています。
D でも、各省庁別の個別面接でそれなりの人物を採っているのではないでしょうか?
T 確かにそうです。しかし、G君(国立大学法学部男子、1次合格)が内々定をもらっているのに、F君(私立大学法学部男子、1次合格)が内々定をもらえないのは、どうしても納得がいきません。F君が東大だったら内々定は確実でしょう。ただ、優秀な人材が中央官庁に採用されなくても、地方公務員とか民間に優秀な人材が分散することは、社会全体から見れば、そう悪くはないと思います。ザ・フューチャーも優秀な人材(人財)が確保できる可能性が増え、私にとっても喜ばしい限りです。人材派遣も原則自由化されたし、人材派遣でもやろうかな? 私は、10年以上も国立や私立の優秀な学生を相手にゼミをもち、人(学生)を見る目が肥えているから、優秀な人材であれば男子であろうと女子であろうと、東大であろうとなかろうと採る方針で臨みます。
D 先生、そんなこと言ったら、中央官庁に優秀な人材が来なくなるじゃないですか。
T それも、やむを得ないよ。でも、君達の先輩は、東大を中心にいい人材を確保できたと思ってかなり満足しているのではないか?だけど、東大生に公務員離れが進む一方で他の有力大学で公務員志望者が増えているのに、ブランドだけ見て、「最近はロクなのが来ないな」と嘆いている所もあるかもしれない。いずれにしても、結局は、自分の後輩を採ると思うよ。
D 僕は、あくまで人物本位で行きます。
T そうですか。これからは、「官」は調整役にまわり、「民」が世の中の推進力になる時代にならなければならないと思いますが、どこでも21世紀の情報化社会に対応できる優秀な人材の確保・育成が重要課題となるでしょう。
E ところで、先生は女性のキャリアをどうお考えになりますか?
T 人類の半分は女性ですから、女性のキャリアもいいと思います。私だったら、無能な男性の上司・同僚・後輩よりは、有能な女性を歓迎します。ただ、男性は子どもを生むことができないので、女性キャリアに対する格別の配慮が必要です。ただ、個人的には、女子の場合、注意すると男子では泣かない場合でも、すぐ泣くので困ります。
E 私は、泣きません。
T だけど、結構、女性に対して上司は遠慮するものだよ。ある女性キャリアが上司にしかられて、ママに言いつけたところ、ママがカンカンに怒り上司に文句を言い、上司がノイローゼになったという話もあります。
E 私は、ママには言いつけません。
T 君の場合は、そういうことはなさそうだね。2次の合格を確認したら、2次落ちの補充をねらってすぐに動いて下さい。
E そうします。
T ただ、現状では、女性キャリアの場合、家庭・こどもの教育と仕事の両立は配偶者の理解がないと難しいよ。
E 理解のある配偶者を探します。
T おっと、配偶者だけでは足りない。配偶者の親、特に、母親に気をつけなければならない。マザー・コンプレックスの配偶者もいるし、子離れしない母親もいる。家に帰って、休めないようでは、満足な仕事もできないよ。
D 僕のガールフレンドは優しくておとなしいけど、母親がうるさそうです。
T それは、困ったね。ガールフレンドも実は、同じだったりして。
E 私は、理解のある親がいる配偶者が見つからなければ結婚しません。
T 大丈夫。ザ・フューチャーが、結婚相談所と託児所を霞が関に作るから。
E 先生、ぜひお願いします!
T うーんっ。でも、君達キャリアは、うるさそうだから、やっぱり、やめた! そんなことより、ザ・フューチャーに来ないか?
E 大企業になったら、ぜひお願いします!
T 馬鹿、何を言ってんだ! 今来れば重役だが、後で来ればヒラだぞ!
E 考えてみます。少し時間を下さい。
T だから今の日本は駄目なんだ!「寄らば大樹の陰」の学生ばっかりだ。自分でビル・ゲイツになろうとする奴は、今の日本の学生には、ほとんどいない。松下・ソニー、トヨタ・ホンダも、もともとは中小企業だったんだぞ…。ブツブツ
|