対談第1回 |
日の丸・君が代を巡るメールによる対話(ノンフィクション) |
(99/7/26) |
K……キャリア1年生
W……渡辺
K A省の1年生のKです。御無沙汰しています。
W 返事が遅れて失礼しました。
K 私はA省B課という部署で働いています。B課はボランティア団体についての調査連絡事務を担当しています。法律を改正するといった部署ではないので地味ですが、受験生時代からやりたい部署に配属されたので満足しています。
W よかったですね。
K ただ、毎日終電ですが。タクシー券はA省では原則として出ません。
W 出ないのが、民間では普通ですね(本筋ですね)。
K 現在は行政初任研修を受講しています。これは9週間に及ぶので7週間を終えた現在かなり疲れています。自分の参加しているコースには渡辺ゼミからはK君、F君、M君、O君、S君がいます。
W 彼らにも、よろしく。
K さて、本題ですが、 国旗・国歌は国民の統合の象徴(こう言ってしまうと天皇ぽくなってしまいますが)であるはずです。
W そうですね。正確には、国旗・国歌は国民の統合の象徴である「べき」です。
K 国旗・国歌はその成立過程がどうであれ国民の統合を象徴します(オリンピック、ワールドカップ等)。そこで国旗・国歌については国民全体の合意が示されるものである必要があります。
W 「国旗・国歌はその成立過程がどうであれ国民の統合を象徴」するというのは、「対外的には」ですね(外形標準説?)。ただし、対内的には、成立過程や歴史を問題にし、そう思わない人がいます。この点は、留保します。
しかし、対外的には「国旗・国歌はその成立過程がどうであれ国民の統合を象徴」するので、なるべく多くの「国民全体の合意が示されるものである必要があ」るのです。ここは、賛成できます。
K そこで日の丸・君が代について考えてみると、これまで反対論は多かったものの国民全体の議論になりませんでした。この機会に積極的に議論するべきでしょう。
W 私も、そう思います。ただし、「この機会に積極的に議論するべき」というのは、政治的・道徳的にそう言えるのであって、法的には国会の意思がすべてです。国民が、いやなら次の選挙で考慮し、違う法案を出す政党に投票する以外にありません。議論を尽くさない国会議員を選んだのは、棄権した人を含め、他ならぬ国民自身です。
K その際、日の丸・君が代の是非と言う論点ではなく国民の象徴はなにかと言う点から検討する必要があると考えます。
W 私も、「国民の象徴はなにかと言う点から検討する」のが筋だとは思います。しかし、日の丸・君が代にかわる象徴がない状況で、連立与党の人たちは、国民の象徴は日の丸・君が代だと思っているので、法案を出している以上、いやでも「日の丸・君が代の是非と言う論点」を論じざるを得ないのです。フジヤマ(サクラ)・スキヤキソング(サクラサクラ)が国民の象徴だと思う人が多数であれば、その人達が法案を提出し、フジヤマ(サクラ)・スキヤキソング(サクラサクラ)が国民の象徴として、ふさわしいか否かが国会を中心に問題となるのと同じです。
K フランスではラ・マルセイエーズの歌詞が好戦的であると言うので改正の検討がなされているとのことです。
W 日の丸は、ともかく、君が代は、国民主権に反するとの批判があるのも同じことです。
K 私見的な結論としては「国歌は国民の合意が得られるまで歌詞なしとする」ということです。感想になっているでしょうか?
W 「国歌は国民の合意が得られるまで歌詞なしとする」というのは、政治的・道徳的にそういえるのであって、法的には国会の意思がすべてです。「国民の合意」を完全に得るのは、不可能です。国民の51パーセントの賛成よりは80パーセントの賛成、80パーセントの賛成よりは90パーセントの賛成が望ましいとは言えますが、100パーセントの賛成は、ほとんど不可能です。代表民主制の下では、国会議員の相対多数の意思を、国民の意思と擬制せざるを得ないのです。
仮に、国会の意思が、国民の多数の意思に反していても、次の選挙を待たざるを得ません。しかし、選挙の争点は、他にもあります。そこで、田中真紀子議員の言うように、国民投票をやるというのも、悪くはないのかもしれません。ただし、憲法41条との関係から、国会はこれに拘束されないという限定つきですが。また、国民投票法という法律を制定する必要もありましょう。この前提をみたし、国会は国民投票を尊重する(政治的・道徳的に)という慣行をつくるのも悪くはないかなとも思います。
K 先生の本稿は面白かったです。ますますの充実を期待します。
W ありがとう。しかし、最近、忙しくて、なかなか手が回りません。
K ところで今年のゼミ生の結果はどうなりましたか。C君の不合格の報に接し残念でした。D君は合格したとのことでよかったと思います。
W 残念なことに、今年、C君を含め君の母校勢は不振です。他方、D君の母校勢は健闘しています。ゼミとしては、昨年並?といったところです。2次落ちは、1次合格者全体の5割と予想され、今年はゼミ員もかなり苦戦しそうです。
K では、先生、今日はこの辺で失礼します。お元気で、さようなら。
W 君も、体を壊さない程度に、がんばって下さい。
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