The Future [ HOME日本の今を考える>『2010中流階級消失』 ]
日本の今を考える
対談第2回 『2010中流階級消失』 (2000/3/14)
卒業生G 先生、最近更新がありませんね。楽しみにしているのですが。
教師W いろいろ各分野で意見はあるのですが、日常の仕事に追われて、なかなか更新できません。
卒業生G そうでしょうね。ところで、先生は、最近、一番何に関心をお持ちですか。
教師W 日本における貧富の差の拡大です。今年の1月に読んだ田中勝博氏の『2010中流階級消失』(講談社)を読んで、かなりショックを受けました。彼は、『日経ビジネス』の取材で明らかになったJPモルガン証券の調査を明らかにしています。それによると、1200兆円(国民1人あたり1000万円)といわれる個人金融資産のうち、東京・神奈川・埼玉の土地所有者だけで400兆円を保有しているとのことです。
卒業生G 本当ですか!
 どうも本当らしいです。56万人(人口の0.4%)が個人金融資産の3分の1を保有しているらしいです。
卒業生G 千葉とか、大阪などを含め、全国の大地主さんを入れたらどうなるでしょうか?
 かなりの割合を占めると思います。昨年、『週刊文春』(9月16日号)に「日本から『中流』が消える日」という記事がありました。筆者の斎藤俊一氏によると、個人金融資産の3分の2(64.5%)を世帯数で4分の1にすぎない残高2000万円以上の世帯が寡占しているとのことです。
卒業生G  逆に言うと、残高2000万円未満の世帯が世帯数で4分の3を占めるのに、個人金融資産の3分の1しか持たないということですか!?
教師W そのようです。正確に言うと、残高2000万円未満の世帯が世帯数で72.8%を占めるのに、個人金融資産の35.5%しか持たないとのことです。
卒業生G では、個人金融資産によって、上・中・下の階級に分けると、残高2000万円未満の世帯は、日本では下流階級ということになりますね。
教師W そうですね。更に言うならば、残高1000万円未満の世帯が世帯数で47.2%を占めるのに、個人金融資産の13.4%しか持たないとのことです。
卒業生G と言うことは、約半数の世帯が、日本全体の約8分の1から7分の1の富しか持たないということですね。
教師W そうです。ペイオフ解禁は、一般の国民に全く関係ないのに、政府がなかなかそれに踏み切れない理由もわかります。土地とかも入れると格差はもっと大きいかもしれません。先程の田中勝博氏は、日本の経済危機は、一般的な納税者の責任ではなく、富裕層の税金を優遇し、払うべき税金を捕捉していないこと、アメリカの国債を買うなどして他国の債務を負担していることに原因を求めています。ちなみに、アメリカの国債は1ドル240円以上で買ったものが多いと経済の先生が言っていました。
卒業生G 半分以下の価値になっているじゃないですか!
教師W 円建てで買っていれば、2倍以上の価値になっていましたが、その時の大蔵省・銀行の都合でドル建てで買ったようです。日本全体としては、損をしています。その分、国民の負担も重くなります。国債と公債の負担だけでも国民1人あたり500万以上あるのに。
卒業生G でも、先生は、中流階級だからいいじゃないですか!
教師W 住宅ローンの額だったら間違いなく中流階級ですが、下流階級です。でも、私も、つい最近まで中流ボケしていました。
卒業生G どういうことですか?
教師W 昨年、『週刊文春』(9月16日号)を読んだとき赤線は引いていたものの、その記事は忘れていました。しかし、今年、『2010中流階級消失』を読んで、ショックを受けたのです。
卒業生G 何をきっかけにその本を読んだのですか?
教師W 電車で隣のオヤジが夢中で読んでいた本を何気なく覗き込んだら、例の「0.4%が3分の1」という記事が目に飛び込んできたのです。
卒業生G 本の題名はどうしてわかったのですか?
教師W その人に聞こうかとも思ったのですが、家に帰って「クロネコヤマト」の「ブックサービス」のホームページで「中流階級」を検索し、『2010中流階級消失』を見つけて注文しました。若干送料(何冊でも定額)はかかりますが、書店に行って探す手間(「機会費用」)を考えるとかえって得です。『2010中流階級消失』は、今年の合格者に読むよう勧めています。
卒業生G 僕も読んでみます。では、また、新しい記事や企画を期待しています。今年も、優秀な人材(財)の養成にがんばって下さい。
教師W 夏になったら、また、ビア・ガーデンで会いましょう。
©1999-2001 The Future