The Future [ HOME日本の今を考える>キャリア・システムを考える(2) ]
日本の今を考える
対談第4回 キャリア・システムを考える(2) (2000/4/17)
若手キャリア(1年生キャリア)P 先生、お久しぶりです!
教師W 久しぶりだね。研修は終わったの?
若手キャリアP もう終わって働いています。この間は午前4時にタクシーで帰りました。
教師W え!まだ、君のところはタクシーで帰っているのか!?最近は、終電で帰るようにしているところも多いのに。
若手キャリアP ええ。でも大体は終電で帰っています。
教師W そう言えば、君の省は局だけで1か月に百万単位でタクシー代を使っているとか、定期をもっていないことを自慢している人もいるとか、君の先輩達から聞きました。また、他の省を辞めた人の話では、1か月の給料よりも1か月に使ったタクシー代のほうが高かったということです。
若手キャリアP ありそうな話ですね。でも、安月給で遅くまで働いているので、そうでもしないと体が持ちませんよ。
教師W 安月給というのは間違いだよ。日本の国家公務員の給与は世界一だよ。課長までは割安かもしれないけど、タクシー代も税金だから給料のうちと考えろよ。寮もほとんどタダみたいなものだろう。民間のアパート・マンションの賃料との差額も給料のうちさ。
若手キャリアP タクシー代も給料のうちと考えろと言われても、直接もらっている訳ではないし。
教師W じゃあ、君達が受講生の時、私が時々でもタクシーで自宅まで2万円近く使って帰っていたら、どう思ったか考えてみたまえ。きっと、「受講料を無駄に使うな!終電で帰れ!」と怒るだろう。普通の労働者・サラリーマンは、終電や終バスの時間を気にしながら残業をするものだよ。
 僕の場合は、講義が終わってすぐに帰れば終バスに間に合うんだけど、板書のチェックがあり、質問する受講生もいるので、ほとんど間に合わない。結局、一度寝た嫁さんを電話でたたき起こして最寄りの駅に車で迎えに来てもらっているんだよ。睡眠不足のせいか、最近は嫁さんも疲れている。

若手キャリアP タクシーでは帰られないんですか?
教師W 子どもが赤ん坊の時はタクシー代(約1000円)を自腹で切っていたけど、今はそんな余裕はないよ。これから教育にも金がかかるしね。幸い、両親は元気だけど、いつどうなるかはわからないし。国民の約半数を占める、1000万以下の預貯金しか持たない世帯の一般庶民は、最寄りの駅からタクシーで帰ることも贅沢と思うよ。
若手キャリアP でも、タクシー業界が困るのでは?
教師W それは建設業界が困るから無駄な公共事業を継続するのと同じ理屈だよ。軍需産業が困るから、ベトナム戦争をやめなかったアメリカみたいなものだ。
若手キャリアP でも、昼間の移動には自転車を使うようになっていますよ。
教師W 時々、新聞にも取り上げられているよね。しかし、なぜ、夜のタクシーの列の話を取り上げないのか不思議です。
若手キャリアP マスコミに行った連中もタクシーをよく使っていますよ。
教師W 矛先が自分のところに来るのをおそれているのかな。でも、仕事の内容や時期によっては、タクシーを使ってもいいと僕は思いますよ。問題なのは、日常的・恒常的に使っていることです。
若手キャリアP では、どうしたらいいでしょう?
教師W 仕事をもっと効率的に行ったらどうでしょうか?最近は、1年生に新聞のスクラップをやらせず、情報サービスの会社と契約して必要な情報を送ってもらっているところもあると聞きます。
 また、パソコンなどを使って省力化に務めるべきです。4/16のサンデープロジェクトで、石原東京都知事が言っていましたが、東京都はインターネットをほとんど利用しないので、八王子からでも書類は役人が新宿まで直接運んでいるとのことです。面白い話ですが、東京都がハッカーの攻撃を受けなかったのも、システムが古すぎて攻撃できなかったからとのことでした。中央官庁はここまでひどくはないと思いますが。

若手キャリアP でも、幹部級になるとその点の理解に乏しいのでは?
教師W そこが問題です。私の経験によると昭和30年(1955年)以前に生まれた人は、パソコンのキーボードを見ただけでも嫌になってしまう人が結構多いようです。サンデープロジェクトでは、「カラオケで演歌を歌うような人では駄目だ!」と言っていたかと思います。
若手キャリアP わかるような気がします。先生は、演歌がお嫌いですか?
教師W 演歌は基本的に暗いので、一部を除いて嫌いです。石川さゆりや森昌子(森進一の奥さん)と同世代ですが。藤圭子(宇多田ヒカルの母)は少し年上ですが、歌は超!暗かった。ただ、本当はネアカと聞きます。また、彼女たちのキャラクターは嫌いではありません。
 話を元に戻しましょう。

若手キャリアP ところで、先生はよくキャリア官僚の民主的正統性を問題にしておられますが、その趣旨は何でしょう?
教師W キャリア官僚は裁判官よりも独立している一方、強大な権力を持っているからです。
若手キャリアP キャリア官僚は裁判官よりも独立している?
教師W そうです。キャリア官僚は裁判官よりも独立しているのです。君もよく知ってのとおり、下級裁判所の裁判官は内閣で任命されますが、10年ごとに再任、通説は再任を原則としていますが、政府見解では内閣の自由裁量で再任するかどうか決定することができます。また、最高裁判所の裁判官は内閣が任命、長官のみ内閣が指名・天皇が任命ですが、その後10年ごとに国民審査を受けます。国民審査は事実上形骸化していますが、一応、国民の民主的統制の手段はあるわけです。
 しかし、キャリア官僚の場合、国民のチェックは一度大臣による任命があれば辞めるまで民主的統制はほとんど法的には働きません。懲戒免職も民主的統制の一つですが。実は、国家公務員法でも地方公務員法でも、いわゆる「リストラ」のための分限免職もできるのですが、一般にはできないと信じられています。

若手キャリアP でも、政治的任用とかにしたら、かつての藩閥政治のようにコネ採用が横行するのでは?また、日本はアメリカと違い、日本は議院内閣制ですよ。
教師W 日本の場合、政治的中立性・専門性が強調されるあまり、政治部門のコントロールが不充分となってしまったと言えます。結局、国民の民主的コントロールと公務の中立性・専門性とのバランスが大事かと思います。個人的には、局長クラスの人事までは大臣の政治的任用でもいいと思います。ただし、健全な野党があって、国民が政治と行政の在り方を監視するという前提が必要ですが。他方、課長以下の人事はその組織の自律に任せるが、採用に当たっては面接等で何らかの形で民意を反映させる必要があると考えます。北海道大学の山口二郎教授も言っていましたが、同じ議院内閣制のイギリスの公務員制度とその運営が参考になるかと思います。
若手キャリアP でも、日本の場合、有権者が政治家に期待するのは、自分の地域や業界への利益誘導や、今流行の交通事故の揉み消しや裏口入学・コネ入社ではないでしょうか?
教師W その危険性は、大いにあります。そうならないよう、国民への健全な「公民」(「市民」)教育が必要ですし、健全な野党の登場・育成が期待されます。
若手キャリアP そう簡単に行くでしょうか?
教師W 行くかどうかはわかりませんが、そうならないと日本に「未来」はないと思います。君も努力して下さい。
若手キャリアP やれるところまでやってみます。
教師W 期待しています。「未来」(ザ・フューチャー)が待っているよ。
©1999-2001 The Future