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日本の今を考える
対談第5回 世界のエコノミストから見た日本の首相(1) (2000/11/27)
(エコノミストT氏)
(渡辺)
T 今回の内閣不信任案の否決に関する The Economist の記事のコピーを送らせて戴きます。

 ありがとうございます。

T The Economistは、経済雑誌として世界で最も評価の高いものです。実際、『東洋経済』は The Economist をモデルとして創刊されています。日本の経済評論家が気の利いたことを語ったり述べたりする時には、大抵は、The Economist の記事を孫引きしています。日本以外の国では、経済学者、経営者、経済・金融分析家、政策担当者などを知的職業に付いている者ならば、 The Economist を少なくとも読んでいる振りだけはしています。アメリカで、法律事務所に行くと、この雑誌が必ずマガジンラックに置いてありました。

W 名前ぐらいしか知りませんでした。そうでしたか。

T 添付いたしましたHTMLファイルはグラフや写真が欠落するでしょうから、完全な版をご覧になられるのでしたら、http://www.economist.com/にアクセスなさって下さい。記事の上の方の" printable page "のボタンをクリックなされると、印刷可能なヴァージョンが得られます。多くの記事が無料でダウンロードすることが出来ます。

W ご丁寧にありがとうございます。

T さて、記事をご覧になると、本文の冒頭に、 " YOSHIRO MORI, Japan’s unpopular and inept prime minister, still has his job. " とあり驚かれることと存じます。ちなみに、" inept "を代表的な英英辞典 Longman Dictionary of Contemporary で引くと" having no skill "とあります。「木偶の棒」と訳すのが一番適していると思います。高級雑誌( quality magazine )が外国の首相のことをここまで腐すのは異例でしょう。

W 情けない話ですね。

T しかし、実際に inept としか言い様の無い首相を間接的であれ選んだのは私達日本人なのです。小渕さんは全くの凡人であり、あんな凡人が首相になるのはどうかと思いましたけれど、森さんのように凡人の域にも達しない程度の人間が首相になってしまうと、小渕さんでさえもが懐かしく感じられます。

W 間接的には国民の責任ですね。

T 岩波文庫に入っている『ローマ皇帝伝』を読むと、所謂軍人皇帝時代に、愚にもつかない人間達が次々と軍人達によって皇帝に推挙され、そして、悪政の限りを尽くした挙句に軍人達によって嬲り殺しにされることが繰り返されます。翻って見れば、今の日本では、政治を金儲けの手段とする者達が自分達の「事業」の展開に一番都合の好い inept な人間を首相の座に祭り上げています。

W 与党の国会議員の多くは、選挙区とか業界とかの利益に縛られ、動くに動けないのでしょう。

T ローマ帝国は滅びる直前まで常にゲルマン人を圧倒する軍事力を有していたと云われます。日本は世界第二位の経済力を有したまま、inept な首相を擁き、沈んでいくのではないかと、この記事を読んで思った次第です。

W その可能性はありますね。我々も何とかしないと……。

T 次第に寒くなってまりました。何卒御自愛の程をお忘れになりませんようお願い申し上げます。

W お互い健康に注意して21世紀を迎えたいですね。どうもありがとうございました。
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