対談第6回 |
世界のエコノミストから見た日本の首相(2) |
(2000/12/1) |
T(エコノミストT氏)
W(渡辺)
T 早速の御返事を有り難うございます。
W 今回は仕事の関係上、返事が遅れて失礼しました。
T The Economist、New York Times、Washington
Postの記事を読んで思うのは、国際社会における日本の「格付け」が80年代と較べて明らかに低下していることです。
W 80年代とは、アメリカの有名な経済学者に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とかおだてられたり、日本の有力財界人が「もはや欧米から学ぶものはなくなった」とか豪語し、日本人の多くが有頂天になっていた頃ですね。
T 例えば、New York Timesのmail magazineであるToday's
headlinesでは、今回の内閣不信任案否決に関する記事は国際欄の中で第3番目に位置付けられています。
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Subject:Today's Headlines from NYTimes.com
Date:Tue, 21 Nov 2000 04:22:24 -0500
From:The New York Times Direct
To:tashiroh@GOL.COM
TODAY'S HEADLINES
The New York Times on the Web
Tuesday, November 21, 2000
(中略)
INTERNATIONAL
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Two Die in Gaza Bombing of Israelis' School
Bus
http://www.nytimes.com/2000/11/21/world/21MIDE.html
Fujimori Quits, and Peru Is Split on Successor
http://www.nytimes.com/2000/11/21/world/21PERU.html
Mori Has a Hairbreadth Victory in No-Confidence
Vote in
Japan
http://www.nytimes.com/2000/11/21/world/21JAPA.html
A New Burmese Leisure Class: Army Capitalists
http://www.nytimes.com/2000/11/21/world/21BURM.html
(後略) |
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T氏の購読しているメールマガジン(部分を引用) |
上の引用をご覧になればお分かりの様に、トップは「エルサレムで2名死亡」、次が「フジモリ大統領の逃亡とペルーの権力の行方」、その次に、ようやく「森政権継続」のニュースです。アメリカにとって最重要の同盟国のひとつの政権の帰趨よりも権力を失った南米の独裁者(?)の行く末の方がニュースになるということは、要するに、日本の首相が誰になるかということが、もはやアメリカにとって大した問題ではないということです。
W 残念な話ですね。
T 確かに、宇野、海部、細川、羽田、村山、橋本、小渕、そして森(敬称略)と、すぐ思いつくだけで片手に余る、
の一言で片付けられる政治家(政治屋)達がよくもこれだけ揃って首相になったものだと呆れます。
W 軽量でしたね。ともかく省庁再編をやった橋龍(橋本龍太郎)が一番マシだ思いますが……。
T 彼らには如何なる理念、思想、信念、信条も無く、正しくオポテュニストの典型であり、小沢や野中といった単なる「政界寝業師」の操り人形として使い捨てされていくだけです。これでは、日本の政権が維持されたことは、もはや世界中のどのメディアでもトップ・ニュースには成り得ないでしょう。
W 情けない話ですね。彼等や小沢氏や野中氏にもそれなりの理想はあると思うのですが、手法が全く古いですね。私と立場は違いますが、田中角栄や中曽根康弘はリーダーシップの点からは評価できると思います。
T London School of Economics and Political
Sciences の看板教授を長く務め、ノーベル記念経済学賞の候補に少なくとも2度挙げられた経済学者の森嶋通夫氏は、最近の著書『なぜ日本は没落するか』(岩波書店)で、悪役としてその一挙一動が世界中でニュースとなった昭和時代の日本とは異なり、2025年頃までには、日本の動静が世界のトップニュースとして駆け巡ることは無くなると予想しました。「日本は政治によるイノベーションがなされなくなる故に、アジア共同体の建設に積極的に取り組まない限り日本の没落は不可避である」という森嶋教授の予想は、彼が予想したよりも急速に実現しつつあります。
W そうならないよう祈っていますが……。
T 恐ろしいのは、日本人の大多数が今回の茶番劇が世界でどのように評価されているかについて無関心であることです。世界中の
power elite に対して最も影響力のある雑誌のひとつ
The Economist が、日本の首相を "inept"
と評したことが、ニュースにならないことこそが、真に問題です。
W 皆、知らないようです。講義では触れましたが……。
T IT革命によって情報が瞬時に世界を駆け巡ることによって、The
Economist のように情報源の「国際標準」として信頼される主体が与えた評価が瞬時に世界中で共有されることをほとんどの日本人は認識していないと思います。
W 確かに。未だにインターネットと接続していない国や地方公共団体の機関も多いと聞きます。一方、ポケモン(ポケット・モンスター)とプレステ2(プレイステーション2)だけが世界標準では困りますね。
T 昨晩は遅くまでお仕事でしたのに、早速の御返事を戴き恐縮です。
W 今回は、今やっと返事が書けました。
T どうか御身体を大切になさって下さいませ。
W 風邪がはやっているようです。先生もお気をつけて。
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