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日本の今を考える
第8回 国家公務員の給与と退職金を考える (02/07/27)
登場人物
 J……受験生
 N……入省予定者
 K……若手キャリア
 W……渡辺
K 現在、公務員制度改革が問題となっています。特に、政府では早期勧奨退職慣行の是正に関連して、退職金の10%削減が検討されています。
N それ、最近、新聞で読みました。確か、退職金は民間だと大卒30年勤務で平均2000万円、国家公務員だと大卒30年勤務で5000万円だったと思います。
J 結構、差があるんですね。
W そうですね。
K でも、僕の手取りなんか民間に行った同級生に比べるとはるかに低いですよ。
W 公務員給与は安いと言われていますが、実は、この点は事実誤認なのです。
K そうですか。
W 確かに若いうちはサービス残業も多く割安感がありますが、課長以上になると日本の公務員の給与は世界一なのです。日本の本省課長級は、米国と英国の局長並の給与水準だったかと記憶しています。
J 先日、新聞で国家公務員のボーナスの額が出ていましたが、平均60万円台で結構低かったですよ。
W 読みが甘いな!
N 管理職は除かれているのでは?
W そうです。総務省から発表される国家公務員の平均ボーナスからは管理職のそれはどういう訳か省かれています。地方公務員の場合、平均ボ−ナスには管理職のそれを含めて発表するのが一般的です。国家公務員も平均すると100万は超えているはずです。
K 私はまだ60万円にも達していませんが。
W まだ若いからです。
J ところで退職金はどうなのでしょうか?
W 日本の官僚の退職金は事務次官で8000万円、本省局長で6000万円、本省課長で1500万円を超えます。
N 結構もらっていますね!
K でも、システム障害を起こしたみずほ銀行の3人頭取の退職金の合計金額は約20億円ですよ。少ない気もしますが。
N 天下りで結構もらっているのでは?
W そうです。2〜3の特殊法人に天下りすれば、銀行の頭取程度はもらえるはずです。ただ、公的資金を注入された銀行の頭取がそれだけの退職金をもらっていいかは別問題です。
N 株主代表訴訟でも提起されるのでは?
W 勝つかどうかはわかりませんが、その可能性はあります。
J 質問なのですが、ひょっとして天下りのために特殊法人があるのですか?
W そういう側面はあります。
K 退職年齢を引き上げる本当の狙いは、天下りの受け皿である特殊法人の整理・合理化のようです。
N 新聞で見ましたが、厚生労働省の幹部は「人生設計が立たない」とか、文部科学省の課長は「50を過ぎたら楽な特殊法人に天下りするのは、キャリアの特権」と言っていました。
J それはおかしい。本来、国の主人公は国民のはずです。官僚は主権者である国民に奉仕すべき「全体の奉仕者」です。主権者である国民が安心して行政サービスを受けられるよう、国民の代表機関である国会は法律で公務員に身分を保障したはずです。公務員の身分は保障しなければならないけど、民間の2.5倍の退職金は多すぎです。それに役人の人生設計のために特殊法人があるというのはおかしいです。
N それに特殊法人は財政投融資の不良債権化の主たる原因ですね。
W そうです。
K 私達はそうではありませんが、上のほうはエリート意識に凝り固まっています。退職金もそれだけもらって当然と考えていますよ。
N 大日本帝国憲法の時代みたいですね。
W 戦後、GHQ(連合国軍総司令部)は官僚組織を温存しました。エリート意識は戦前から承継されています。さらに学歴信仰がエリート意識に拍車をかけています。この点については後日検討しましょう。国民と公務員との関係についてJさん、さらに法的に説明してください。
J 国民には抽象的ですが、公務員の選定・罷免権があります。キャリア官僚といっても、国民の代表機関である国会によって指名された内閣総理大臣によって任命された国務大臣によって任命され、国務大臣の指揮監督を受けるはずです。しかも、法律による行政の原理から、公務員は法律の根拠に基づき、法律に反しないように行動しなければなりません。法律や職務命令に違反した場合には、免職を含む懲戒処分を受けるはずです。
W よく勉強していますね。ただ、前提として、政治家、特に大臣の資質も大事だと思います。
K 大臣だけでなく、副大臣と政務官にもいい人材を配置してもらいたいです。それに、私達が大臣の国会答弁をつくるのはともかく、国会議員の国会質問までつくらされるのは勘弁してもらいたいです。早く帰れなくなるし。
N 議院内閣制の趣旨に反しますね。それに何のために政策担当秘書があるのかわかりません。
W そうですね。大臣・副大臣・政務官それに国会議員にはもっと勉強してもらわないと。
K 私達もいろいろな業界や分野の人と話をしたいのですが、忙しくて……。
N 今のうちにしっかりいろいろ勉強しておかないとだめですね。
W そうです。
K 課長以上はともかく若手の給与が安いのは問題です。付き合いにもコストがかかりますから。
W そうですね。若手キャリアの給与は大手企業並みに引き上げるべきです。一方で、そのかわり退職金は引き下げ、不要な特殊法人は整理・統合すべきです。国と地方で約700兆円、国民1人あたり約580万円超の負債をかかえた現状では、公務員の給料の適正化と事務効率の向上は重要な検討課題であると思われます。
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