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私はこう考える

郵政民営化について (05/09/16)

 今回の選挙の結果の是非は歴史の審判に待つしかないが、ともかく郵政民政化を唱える自民党の大勝利に終った。その結果、与党の自民党と公明党で法案の再議決も可能となった(憲法59条2項)。また、参議院では未だ数が足りないが、憲法改正の発議も衆議院だけだと理論上は可能な数字になった(憲法96条)。憲法改正も論点として浮上してくる可能性もある(私は憲法改正は必要だが、問題はその内容であると考える)。今後、大敗した民主党の対応・政策が気になるが、外交や憲法改正で異なる立場をとる与党の公明党も自民党が勝ちすぎて内心困っているかもしれない。

 私は「郵政民営化に賛成か?反対か?」の二者択一ではなく、郵政民営化は必要だとしてもその内容が重要だと思う。法案(A案とする)だけでなくB案、C案といったもっといい法案があるかもしれない。造反議員の1人も指摘していたが、今の法案では旧・長銀のように外資の食い物になるのではないか、多くの銀行のように国債を買うだけで本当に民間にお金が流れるのか、僻地に対する福祉政策的意味合いのあるネットワークの維持ができるか、それらの懸念が全く払拭できていない。しかし、「郵政民営化賛成・法案反対」の造反議員も民主党の多くの議員も具体的な対案を示せず敗退していった。日本を代表するTV司会者みのもんたが「郵政民営化賛成・法案反対という立場は全く理解できない」とTVで発言したのを聞き私はかなり驚いたが、今考えるとそれが今回小泉・自民党を支持した多数の国民の理解・声を代弁しており、その時すでに勝負がついていたのかもしれない。

 市場経済至上主義または「小さな政府」を支持する立場(小泉・自民党)からは郵政民営化は当然、福祉政策または「大きな政府」を支持する立場(造反議員の一部。共産党・社民党)からは郵政民営化は反対というように二者択一で考えればわかり易い。しかし、市場経済を基本とするとしても、その弊害(ヘッジファンドによる通貨危機、内外の経済的格差の拡大など)を抑制しつつ国民の福祉を向上させるのが現代国家のあるべき姿ではないか。佐伯啓思京都大学教授も新聞で指摘していたが、グローバル化した市場経済の下、日本の国益を守ることができるか、そのことはこの選挙で決着がついた訳ではない。

 「改革」の言葉に魅せられた国民のどれほど多くが、国会議員のどれだけが廃案になった法案の具体的中身・内容・影響力を知っているのか疑問である。元外交官の造反議員は「法案を深く勉強していなかったら、単純に法案に賛成していた」と語っていた。マスメディアも「刺客」などを興味本位で選挙を取り上げ(「小泉劇場」)、郵政民営化の論点整理を怠り、外交や年金などの他の政策論争には目をつぶった観もある。

 その意味で今後の国会での充分な審議を期待したいが、造反議員は党内での処遇や次の選挙を気にして、法案に対してはフリーパスで賛成に回る可能性が高い。何のための国会議員なのか、何のために参議院が存在するのか、その存在意義を再び問わなければならないことになりそうである。

 国会で与党が安易に数に頼らず法案の問題点を払拭できるに足りる充分な審理をする余裕を示すか、野党が現在の法案の郵政民営化の問題点をどれだけ追及し、優れた政策(対案)を提示できるか、注視しなければならないと思う。



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