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四島を追う者は二島も得ず(北方領土問題) (11/02/13)

 平成23年(2011年)は兎(うさぎ)年である。

 「二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうのもはいっとをもえず)」という中国起源の諺(ことわざ)がある。

 その意味は「同時に二つのものをしようとすると、どちらも成功せずだめになってしまうこと」である。
  http://www.ymknu200719.com/kotowaza/koto-ni-0015.html
 
 ちなみに、英訳はこちらが参考になる。
  http://home.alc.co.jp/db/owa/s_kaydic?num_in=368&ctg_in=3

 2010年から2011年にかけて日露両国は北方領土問題に関して、お互いに原則論を主張するだけになってしまった。
  http://www.asahi.com/politics/update/0211/TKY201102110223.html?ref=rss
 
 元外交官にも主張している人(谷内正太郎元外務事務次官など)がいるが、まず二島だけなら何度か戻ってるチャンスはあった。

 私にはソビエト連邦が崩壊して、ロシアが成立し、ロシアが経済的に非常に困っている時が一番のチャンスだったと思う。

 また麻生内閣時の面積半分(3.5島)返還論もそう悪い選択ではなかったと思う。

 しかし、いつも出て来て、せっかくのチャンスを逃す原因となったのは、「四島全部でないと駄目だ」という正論である。

 確かに正論だが、実効支配しているのはロシアである。

 正論を何度も叫んでも「負け犬の遠吠え」にしかならない。

 日本はロシアに負けている。敗戦国である。

 ただし、日ソ中立条約を破ったソ連に腹を立てている日本人は今も少なくない思う。

 私の祖母の妹一家も満洲でロシア軍に殺され、生き残った家族もバラバラになり、行方不明になったとも聞く。

 だから、条約(約束)を破った(破る)ロシアやロシア人は大嫌いだという日本人は少なくない。

 (ただし、日本の同盟国であったドイツがソ連に同じことを先にしているのが、日本の弱みでもある。)

 しかし、北方四島は日本が無条件降伏をしたポツダム宣言受諾後にロシアが占領した。

 「ソ連は無条件降伏した日本の島を占領した。だから、北方四島は全部返してもらわないと筋が通らない。」という意見は正論だと思う。

 しかし、現実の問題として、今も四島全部ロシアが実効支配している。
 
 一括返還はロシアの指導者の面子もあるし、現実には無理である。何らかの見返りが必要である。

 やはり、経済協力を武器に、日ソ共同宣言の立場を踏まえ二島を確実に日本のものとして、残りの二島を交渉の対象に絞り込んでいく(決して放棄するのではない)のが現実的である。

 この立場は、収監された鈴木宗男氏の立場と一致するようで、彼が外務省に対する影響力を失うに従って、外務省では「四島一括返還論」が優位になったとも聞く。

 しかし、今の時点ではもう顧みられなくなった日ソ共同宣言でも二島返還なのに、どうやって今、四島を一括してロシアから返還してもらうのか、非常に疑問である。

 結局、声高に原理・原則・理想である「四島一括返還」を叫んでも、四島はロシア領のままである。

 標題にあるように「四島を追う者は二島も得ず」である。

 ロシアは日本が経済協力しなくても中国や韓国が経済協力すると日本を牽制しているようだが、日本の経済力や高い技術力を欲しているとも聞く。

 日本の経済力や技術力を武器になんとか、まず二島だけでも返還してもらう必要がある(残り二島は交渉継続に持ち込む)と私は現在の段階では考えている。

 最近のロシアのメディアにも、中国よりも日本と経済協力関係を深めたほうが国益にかなうから、北方領土問題を何とか解決しなければならないとするものもあった。

 日本への理解を深め、日本の理解者を増やすことも重要である。

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