先日(2月13日)興味深い番組を見た。NHKスペシャル「北方領土 解決の道はあるのか」である。
その中で、四島一括返還論の代表として丹波
實(たんば みのる)元駐ロシア大使、二島段階的(先行)返還論(二島限定返還論ではない)の代表として東郷和彦元駐オランダ大使(http://kazuhiko-togo.com/)と鈴木宗男前衆議院議員が登場し、その主張をしている。
特に、丹波元駐露大使は樺太から北海道に引きあげてきた経験を持つので、かなり感情がこもっており迫力があった。
彼は東京宣言の立役者である。
ぜひ配信中に見ておこう。
また、『外交』Vol.04(時事通信社)に掲載されている袴田茂樹青山学院大学教授の「北方領土交渉はなぜ後退したのか」も必見である。
袴田教授も四島一括返還論のようだが、(1)ロシア政府は、日本政府の主張する四島一括返還論を国内世論向けの「儀式」だと見ていること、(2)日本が平和条約を結んでいないのに、ロシアと結んでいる原子力協定や経済協力協定が(1)の根拠になっていること、(3)原子力協定や経済協力協定が未締結の平和条
約の価値を大幅に下げていることの指摘が特に興味深かった。
日本はシベリアの開発などで中国や韓国に先を越されるのではないかと焦っているのかもしれない。しかし、経済協力や技術協力を推進することは北方領土返還のための重要なカード・武器を自ら放棄しているのではないか。
今、四島一括返還を主張するなら、ロシアとの協力協定は当面見直さざるを得ないのではないか(中国はともかく、韓国には少なくとも北方領土での開発に協力しないよう働きかけも必要である)。
この論文もぜひ読んでおこう。
ロシア人の中には、四島を一括して返還し、日本人と「友好関係」を結ぶべきだと主張する人もいた。
ノーベル文学賞を受賞したアレクサンドル・ソルジェニーツィンがその人である。
彼は、日ソ中立条約を破ったにもかかわらず、北方領土を日本に返還しようとしない旧ソ連とロシアの指導者を「エセ愛国主義者」と批判している。
ロシア人にも信義と道義を重視する真の「愛国者」はいたのである。
ただし、彼はこの世にはいない。
今のロシアにソルジェニーツィンがいうところの真の「ロシア人」、真の「愛国者」、真の「友人」はどれくらいいるのだろうか?
<参考>
1.NHKスペシャル 「北方領土 解決の道はあるのか」
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011024665SC000/
2.袴田茂樹「北方領土交渉はなぜ後退したのか」
『外交』Vol.04(時事通信社)
3.アレクサンドル・ソルジェニーツィン『廃墟の中のロシア』(草思社)
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