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本試験予想・分析情報
2001年本試験情報 外務専門職本試験分析・国際法

 1.同一の事項に関する一般的性格をもつ多数国間条約と特別条約の関係について、具体的な例を一つとりあげて、論じなさい。
 Wセミナー答練が奨めてきた「具体例をあげて論ぜよ」式の対策の成果がはっきりと出てきた。「具体的な例を一つとりあげて、論じなさい」というのだから、「特別法は一般法を破る」の原則を概説して済むような問題ではない。頭に浮かぶ事例は二つある。一つは、みなみまぐろ事件における国連海洋法条約とみなみまぐろ保存条約の関係(2001年第3回外専答練でズバリ的中)、もう一つは、ロッカービー事件における国連憲章とモントリオール条約の関係(第6回答練で出題)である。後者は仮保全措置のときの国連憲章103条が優先するとした判断(92年)と管轄権判決で本案問題に先送りするとした判断(98年)を書くことになるが、抵触するかどうか本案の結論が出ていないので、やはり、ここは「みなみまぐろ事件」を概説すべきである。みなみまぐろ事件については、本年4月まで日本語文献ではITLOS暫定措置までしかおさえられておらず、仲裁判決のポイントまで示したセミナーの答練冊子をどこまで消化できたかで勝負は分かれる。出題者は、昨年さかんにみなみまぐろ事件について講義されていたという位田先生と思われる。
 2.国際人権規約上の義務違反を国家責任法の観点から論じなさい。
 出題意図がつかめない難問である。とりあえず、場合分けにより、基本書でも解ける骨子を考えると、法益の種類によって分類し、それぞれ国家責任の発生・追及・解除について分析すれば良い。まず、外国人の人権侵害の場合は、本国の法益侵害として切り替え、外交保護権の問題として国家責任を追及でき、国際人権規約は国際最低標準の基準となる。一方、締約国の自国民の人権に関する規約違反については、相互主義が機能しないため、国際機関が違反の認定・追及を確保するしかない。その際、通常の違反に対する手続(A規約・B規約それぞれの手続)と大規模・重大な人権侵害の場合とでは様相が異なってくる。後者は、普遍的義務違反となり、国家の国際犯罪を構成する可能性が出てくるため、国際機関による制裁のあり方、第三国による対抗措置の可能性にまで議論は及ぶ。
 3.コソボ問題を原因として行われた1999年のNATO軍によるユーゴスラヴィアへの空爆を、国際法の観点から論じなさい。
 そのままの問題を第6回答練第2問で出題したし、直前ゼミ、さらに、ザ・フューチャー出題論点予想でも小寺先生の法学教室連載から触れた通りなのだが、まさか、そのまま出るとは思わなかった。
 むしろ受験生に大変だったのは、1500字程度に要約する作業の方だったろう。こういうときに必ず出てくる言い草の一つに、余計な知識がたくさんある必要はなく、基本書の知識だけで十分に解けるという言い草である。しかし、そんな簡単そうに言うのはとても短絡的な議論である。実際には様々な事例・判例の正しい事実関係とその評価を正確に踏まえた上で、いかに必要な部分だけを摘出して構成し、的確に伝えられるかという骨太な思考力・表現力が必要となるのであり、そうした豊かな思考背景がある受験生とそうでない受験生の答案を、採点者は簡単に見透かしてしまう。闇雲な暗記は確かにいらないが、国際法はケースから積み重ねて考えられる力が最重要であり、引き続きセミナーではケース重視の講義を行っていきたい。
(杉原龍太)

※なお、トップページにもあるように7月7日(土)午後6時からWセミナー東京本校にてこれらの問題の解答速報会を行い、詳しい解説と解答例の冊子を配布する。http://www.w-seminar.co.jp/koumuin/index.html

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