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『「不祥事続出警察」に告ぐ』(元札幌高検検事長 佐藤道夫著、小学館文庫) 457円+税

 昨年は神奈川県警を中心とした警察の不祥事がマスコミによって大きく取り上げられ、国民の警察に対する信頼を大きく揺るがした一年であった。この一連の不祥事に対してメスを入れるべく書かれたのが本書である。

 著者である佐藤氏は、現在の参議院議員の前には40年に及ぶ検察官時代を経験しており、警察とは日々深く関わる立場にあった。本書はそのような検察官時代の体験を交えつつ書かれている点において、単なる抽象的な警察批評とは一線を異にしている。言ってみれば半エッセー的であり、読者を飽きさせないのである。例えば―――
 収賄容疑で逮捕された税務署の課長と課長補佐。両人はシラを切り続ける。しかし、勾留満了を迎えた20日目、最後の取調べで課長補佐は自供を始める。自供をした課長補佐は有罪となり、自供をしなかった課長は不起訴となる状況下である。そのような中でなぜ彼は自白したのか―――。
 このように実際にあった事件を紹介しながら、日本の警察について語る。アメリカでは、刑事の説得により容疑者が自白するなんてことは考えられないそうである。

 そして特にキャリアシステムに対しては本書全体を通じて批判しているが、第四章においてはあえて一章を割いて痛烈に批判を浴びせている。そして、一連の不祥事の原因の一つとしてキャリアシステムがあるとしている。キャリアとノンキャリアとが厳格に峻別されている中で警察の士気が低下した結果、不祥事は起こったのであり、これは起こるべくして起こったとしている。
 旧陸軍のキャリアシステムと比較しながら警察について語っているところなどは実に興味深い。

 著者の佐藤氏の検察官、すなわち法律家としての視点から書かれた本書には、その内容の賛否はともかくとして新鮮に映るものも多い。我々が普段見落としがちな問題を提起してくれているからである。
 警察庁志望者はもちろん、他省庁志望者においても、本書を「公務員全般に対する警鐘」として捉え、自分が公務員となり公務員として活躍していく上で、どのように自分を律していくべきかを考える参考になるだろう。

〈目次〉
 第一章 警察庁長官辞任すべし
 第二章 警察は本来こんなに優秀
 第三章 見過ごされた重大事件の真実
 第四章 それはキャリアの責任
 第五章 警察改革こう断行せよ
(00/07/13 大田優樹)
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