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『国力研究』(高市早苗、産經新聞出版)―その1―

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はじめに
 編筆者の高市早苗氏は、衆議院議員で経済安全保障担当大臣。本書は2024年(令和6年)9月1日に出版されたので、9月27日の自由民主党の総裁選挙対策のためともいえる。

 9月9日、彼女は出馬宣言をした。
https://www.youtube.com/watch?v=6p21fsXiosk

 自民党総裁選挙に合わせ、世間の注目を引きそうな幾つかの政策を列挙するにとどまる総裁候補者とは違い、高市候補の演説は、「日本列島を、強く豊かに」という理想の下、総論と各論のバランス、政策の質と量で、他の候補者を圧倒していたように見えた。

 その政策の背景や詳細がわかり、記者会見では足りない情報を得ることができるのが、この『国力研究』(産經新聞出版)である。

 高市大臣は、この本で、「総合的な国力」の要素(必要条件)として、@外交力(第一章)、A防衛力(第三章)、B経済力(第四章)、C技術力(第五章)及びD情報力(第二章)を挙げている。また、その大前提としてE「人材力」(結びの章)が重要な要素であるとしている。

 次回以降、@〜Eについての感想を書きたいと思うが、以下は最初の感想である。

 高市大臣は、日頃から、国民に尽くすという強い使命感を持ち、真に国民のための政策とは何かということを、個人としての経験や政治家としての経験を踏まえて、同志(「日本のチカラ」研究会)とともに勉強し考え抜いて来た、再度の総裁選に臨み、それらの政策を『国力研究』で今、国民の前に提示するのだ、という印象をこの本から強く受けた。

 『国力研究』は単なる総裁選挙対策に留まらず、真剣に自分・家族・知人・職場・地域・社会・国家・世界の未来と幸福を考えている国民に対して、自分の問題意識・危機意識・情熱を国民に伝えたい、共有したいというメッセージだと思う。

 一番、印象的だったのは、元外交官が3人執筆していることである。山上信吾 駐オーストラリア大使と垂秀夫 前駐中国大使(第一章「外交力」1・2)だけでなく、兼原信克 元国家安全保障局次長も登場している(第三章「防衛力」7。なお、6では尾上定正 元空将)。

 高市大臣が、「外交力」と「防衛力」を特に重視するのは、国連の安全保障理事会の常任理事国による他国の侵略、核保有3か国に囲まれた日本という現状がある(序章)。

 一番、驚いたのは、彼女が「宇宙政策」にも言及していることである(第六章)。「ウサデン(宇サ電)」というように、陸・海・空に加え、宇宙空間、サイバー空間、電磁波が軍事の面でも重要となっているので、安全保障が専門である高市大臣が宇宙政策に関心を持つのは当然ともいえるが、「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」の問題まで強い関心を持ち、G7でも議題にし、コミュニケまで持って行った政治力(*)には大変、驚いた。

 全体として、日本の「技術力」を「経済力」に繋げるという発想は、関西人・松下政経塾出身者らしいとも思った。

追記(*に関して)
 高市大臣が、G7において「スペースデブリ」の問題を議題にし、コミュニケまで持って行く過程で、岡田光信アストロスケール社(「スペースデブリ対策」の世界のトップランナー)CEOの活躍が書かれている(「結びの章」「産業人材について」)。
https://astroscale.com/ja/about-astroscale/team/#teambutton-1-1
 彼は、かつて東京大学大学院の研究室におり、アメリカの大学にも留学が決まっていたのだが、研究者の狭い世界に飽き足らず、広い世界を求めて、官僚の世界を志し、「渡辺ゼミ」に入ってきた。
 彼は理系であるにもかかわらず、法律職で合格し、大蔵省に入省した。しかし、官僚の世界も彼には狭すぎたようで、遂に彼の関心は宇宙に向かって行った。

(2024/9/16 渡辺 一郎)
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