前回に引き続き、この問題を検討する。
整理しておくが、学年の途中で人数が増え121人となり学級の増設が問題となったのであって、4月の時点で120人の場合、現行制度では認められない30人学級4クラスに反対の人はいない。
また、私が30人学級に賛成するのは、私達夫婦と娘が担任の先生に不満があるわけでもない。また、娘も多少のいじめの兆候はみられたものの、友人関係に悩んでいる訳でもない。その証拠に、最初は妻も娘も学級再編成に反対であった。妻は、娘の口が重いので、娘の友人のNちゃんから情報を得ていたが、それがなくなる心配をしていた。また、娘も1年生からずっと同じクラスで、妹弟の幼稚園の先輩でもあるNちゃんと分かれるのが一番つらいと言っていた。
しかし、私が30人学級に賛成するのは、以下の理由による。
私は、法律職のゼミを10年以上もっているが、経験上、40人では3時間のゼミで全員に1回当てることはできないが、30人では何とか1回は当てることができる。また、以前は、5人程のグループに分け、ゼミの後に、講義の内容や生活上の悩みについて相談を受けたりもしたが、30人では6回ですむが、40人では8回もかかってしまう(最近は、前後も仕事が詰まり、面談はできなくなってしまっている。時間的余裕があれば再開したいのだが……)。要するに、40人と30人では、学習面と生活面での指導の濃淡がまるで違うのである。一流大学の大学生でも40人クラスはつらいのに、小学生の高学年はどうだろうか? 5年生の場合、一流の進学塾では1学期に3学期の内容をすでにすませている。他方、私の見たところによると、40人学級の場合、学力面では、やや危ない子10人、危ない子10人くらいはいるように見受けられる。学力差は大きい。30人学級は、これらの特に中位から下位の子どもに有益と考える(一応、娘は中位から上位のようなので、別に40人学級でもかまわないのである)。
また、妻が仕事(小学校の教員)を辞める前には、私はその様子をつぶさに観察することができた。クラスで問題のある子の指導をするためには家庭訪問(場合によっては、校長・教頭と一緒に)をしなければならない。父親が帰って来る7時から8時に家に行き、その後話し合いとなるから、自宅に戻るのは深夜となる。それが、夏休み前の通知票をつける時期になると、作業は未明となる。私が見かねて、写真を見ながら、所見を口述筆記させたというのは、そのような時期である(その話をあるサッカー通に話したところ、元全日本監督のオフト氏が、1982年にヤマハ(ジュビロ磐田の前身)の臨時コーチを引き受けるにあたり、メンバーの写真を見て、ほぼ正確にポジションを言い当てたという。それと同じことをやった訳である。妻と結婚する前は、夏には富士山とか、白山という霊山によく登っていたので、多少インスピレーションが働いたのかもしれない)。話を話を元に戻すと、クラスに問題のある子が1人いると3分の1、2人いると3分の2のエネルギーを奪われてしまう。3人以上の場合は……結局、1人でも人数が少ないほうが、先生にも生徒にもいいのである。
こんな話を妻にしたところ、昔のことも思いだし、すぐ30人学級に賛成の立場に転じた。娘も、Nちゃんと分かれるのはつらいが、3〜4年の時の友人のUちゃんのように今は他のクラスにいる友達と再び同じクラスになる可能性もあるとわかり、賛成に転じた。そして、娘は、こう言い切った。「子どもは勉強のことなんか考えていないよ。今の人間関係のことしか考えていない。子どもの意見なんか聞く必要はない。大人が決めればいい。クラスでは、誰がみても5〜6人勉強面で危ない人がいるよ。将来のことを考えると、4クラスのほうがいい。」と……。私が、「反対している先生もいるよ?」と聞くと、「校長先生のほうが偉いんでしょう!」とのこと。背も小さく、胸もペッタンコで、未だにピカチュウやピチューの絵を描くのが好きだが、「頭の中はもう大人だ」と言っている。この間も、Uちゃんと一緒に25匹もアマガエルを捕まえてきて、「1年生や2年生であるまいし、もといたところに戻してこい!」と私に怒鳴られていたのだが……
繰り返すが、私達夫婦と娘は、今の40人学級には不満はない。ただ、みんなの将来を考えての30人学級賛成であった。しかし、父母へのアンケートが締め切られ、再び説明会があると連絡されてきた日、昼過ぎから無言の電話が5〜6回かかってきた……。
人間、お互いの立場を理解して、歩み寄れないときほど悲しいものはないと思う。お互い、子どものためと思いつつも……。
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