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私の教育論
公共心の欠如(3) (2001/8/16)
   このテーマで心ならずも不愉快な話を2回書いてしまった。しかし、それはあくまで例外であって、日本の若い人達がすべてそうではないと思っている。
 6月27日、気の向くまま、先月長女が修学旅行で行った日光に1人で出かけた。日光は約30年ぶりである。北千住から東武の特急に乗って、1人でぼんやりと外の風景を見ていたら、春日部から20代前半のOLと思われる3人組が乗ってきた。すると困った様子で、私に「そこの席、合っていますか?」と聞いてきた。私は、既に車掌さんが来て切符を確認して行ったので、「失礼なことを聞くな(失礼な聞き方をするな)」と少し不愉快になった。しかし、ひょっとして間違っているのかもしれないと思い直して、彼女たちにも見えるよう切符を確認したところ、やはり私が正しかった。彼女たちの狙いは、座席を向かい合わせにして、3人で話をしたかったらしい。結局、彼女たちの依頼で、席を向かい合わせにしたが、車窓から見える風景を見ながら1人で物思いにふけるという私の当初の目論見は見事に崩れ去ってしまった。その中の1人が、お礼にキャンディーを1つすすめてくれた。断るのも悪いので、すぐに頬張ったが、甘すぎるので少し閉口した。そのうち、もう1人がポテトチップスを食べ始めた。またすすめられるのも困るので寝たふりをした。彼女たちは安心して、A「私達は東京のような緑のないところには住めないわよね……」B「そうね。マンションよりは、やっぱり庭のあるお家がいいわよね……」C「住むとしたら、こんな所がいいわよね……」等と外の景色を見ながら喋っている。「確かにそうだ。でもこの辺は埼玉ではなく、栃木のはずだぞ。でも、20年前の埼玉が今の栃木だな」とか考えながら話を聞いているうちに本当に寝てしまった。起きると「あの時は、何も考えないで……」とか中禅寺湖での思い出を話している。どうも彼女たちは気のあった仲間同士で小学校の修学旅行の追体験をするらしい。きっと彼女たちは2〜3年のうちに結婚して埼玉か栃木で平和に暮らすのだろう。
 7月24日、9時ののぞみで京都に行くので、7時台の常磐線に乗った。ダイヤが乱れていたせいか、席が少し空いていた。普通列車(茨城では各駅停車、千葉では快速と同じ駅に停車、東京では快速列車よりも止まる駅が少ない、と素人にはわかりにくい)は向かい合ったボックス席がかなり残っており、そのボックス席に茨城県の高校生か大学1〜2年生位の3人組とカバンが座っていた。私が「すみません」と言うと彼等の1人がすまなさそうに素早くカバンを片付けてくれた。耳に入ってくる話を聞いていると、仲間内で「新松戸で乗り換える」とか言っている。「それだったら次の柏で乗換だな」と思っているうちに、柏に着いた。しかし、彼等は降りる気配はない。「あれっ! 降りないの……。知らないんだ。だったら、教えてあげようかな」と思ったが、もうドアが閉まりそうで間に合いそうにもない。「どうせ、次の松戸から各駅停車(千代田線直通の電車)に乗り換えて戻っても大した時間はかからない」と思い、黙っていた。彼等の1人は新松戸を通り過ぎたことを知り、次の松戸で降りるつもりでいたようだ。しかし、松戸に着いても「次の駅だ」と言いだす子がいて、皆で座席から立って、もたもたしているうちに多数の乗客に押し返されて、ほとんど身動きが取れない状況で次の北千住まで運ばれて行ってしまった。一声「どこまで行くの?」「それだったら、柏で各駅停車に乗り換えて、新松戸まで行って……」と教えてあげればよかったと少し後悔もした。でも、失敗したり、満員電車も経験したりで、少しは社会勉強になったか?おそらく夏休みに入りTDLに行くつもりだったのだろう。乗換駅も確認しないドジな連中だったが、結構いいヤツ等だった。
 8月のある講義のない夜、8時台に日暮里から快速電車に乗った。すると2人の男子学生が自然と席を詰めてくれた。最近は、不況のせいか夜の時間帯の電車も比較的空いているのだ。『法学教室』を片手に国家 I 種試験とか司法試験の話をしている。始発の上野から乗っていたので東大生かもしれない(さては当サイトを読んだ?)。ちなみに、公務員になって「こんな遅くまで国民のために安月給(課長以上になると世界一なので事実誤認がある)で働いているのだから、タクシーで帰るのは当然だ」と思い始め、必要以上の税金を使うことの抵抗や痛みを感じなくなった瞬間に、公僕としての堕落が始まっているのだ(京都議定書の趣旨にも反する)と私は思う。リストラ・イジメ・セクハラに耐え、終電・終バスの時間を気にしながら、最寄りの駅から自宅へのタクシーも贅沢と考えるのが一般人の感覚なのである。電車やバスに乗っているといろいろな社会の断面や人間模様も見えてくる。彼等にも今の一般人としての感覚をいつまでも忘れないでもらいたい。
 いずれにしても、こういう善良な若者がいる限り、日本の未来は決して暗くはないと思う。
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