行政法第4位 (6/10)
(最判平10.6.16=判例六法・行政事件訴訟法242条の2第32番)
(最判平10.7.3=平10重判=判例六法・行政事件訴訟法242条の2第10番)
(最判平10.11.12=平10重判6=判例六法・行政事件訴訟法242条の2第7,8番)
 住民訴訟関係では、第1位の判例の他、以下の3判例を押さえておこう。

【最判平10.6.16=判例六法・行政事件訴訟法242条の2第32番】

【論点】
 地方自治法242条の2第7項にいう「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」には、同条1項4号の規定による訴訟を提起された者が請求の認諾をし、それが調書に記載された場合も含まれるか?(肯定)

【判旨】
 地方自治法二四二条の二第七項にいう「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」には、同条一項四号の規定による訴訟を提起された者が請求の認諾をし、それが調書に記載された場合も含まれると解するのが相当である。

【最判平10.7.3=平10重判=判例六法・行政事件訴訟法242条の2第10番】

【論点】
 住民訴訟においては、その対象とする財務会計行為上の行為又は怠る事実について住民監査請求を経ていれば、右監査請求において求めた具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請求をすることも許されるか?(肯定)

【判旨】
 住民訴訟につき、監査請求の前置を要することを定めている地方自治法二四二条の二第一項は、住民訴訟は監査請求の対象とした同法二四二条一項所定の財務会計上の行為又は怠る事実についてこれを提起すべきものと定めているが、同項には、住民が、監査請求において求めた具体的措置の相手方と同一の者を相手方として右措置と同一の請求内容による住民訴訟を提起しなければならないとする規定は存在しない。また、住民は、監査請求をする際、監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して、必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り、措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須ではなく、仮に、執るべき措置内容等が具体的に明示されている場合でも、監査委員は、監査請求に理由があると認めるときは、明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることができると解されるから、監査請求前置の要件を判断するために監査請求書に記載された具体的な措置の内容及び相手方を吟味する必要はないといわなければならない。そうすると、住民訴訟においては、その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査請求を経ていると認められる限り、監査請求において求められた具体的措置の相手方とは異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請求をすることも、許されると解すべきである。

【最判平10.11.12=平10重判6=判例六法・行政事件訴訟法242条の2第7,8番】

【論点】
 市がその施行する土地区画整理事業において土地区画整理法98条2項、104条11項に基づいて取得した保留地を随時契約の方法により売却する行為は、住民訴訟の対象となる「財産の処分」及び「契約の締結」に当たるか?(肯定)

【判旨】
 住民訴訟は、地方自治法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実を対象とするものでなければならない(同法二四二条の二第一項本文)ところ、普通地方公共団体の所有に属する不動産は、公有財産として同法における「財産」に当たるものと規定されている(同法二三七条一項、二三八条一項一号)から、普通地方公共団体の所有に属する不動産の処分は、当該不動産が当該普通地方公共団体の住民の負担に係る公租公課等によって形成されたものであると否とを問わず、同法二四二条一項所定の「財産の処分」として住民訴訟の対象になるものと解される。また、右の不動産について売買契約を締結する行為は、同項所定の「契約の締結」に当たり、住民訴訟の対象になるものと解される。

(渡辺)


戻る
©The Future 2000
ザ・フューチャーへのお問い合わせ、ご意見・ご感想などはinfo@thefuture.co.jpまで