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今年狙われる重要判例
憲法4 (3/5)
(最判平11.12.14=平11重判・憲法6)

 コンピューターゲームを入力したフロッピーディスク(いわゆるエロゲー)が、宮崎県における「青少年の健全な育成に関する条例」に基づき有害図書類の指定を受けたため、製造販売人がその取消しを求めた事例である。

【論点】
 条例に基づく有害図書指定の合憲性(表現の自由・検閲、憲法21条)

【判旨】
 平成八年宮崎県条例第二七号による改正前の宮崎県における青少年の健全な育成に関する条例一三条一項による青少年に有害な図書類の指定が憲法二一条二項前段の検閲に当たらないことは、当裁判所の各大法廷判決(昭和五七年(行ツ)第一五六号同五九年一二月一二日判決・民集三八巻一二号一三〇八頁、昭和五六年(オ)第六〇九号同六一年六月一一日判決・民集四〇巻四号八七二頁)の趣旨に徴して明らかである。
…本件条例一三条一項、三項、四項の規定による青少年に有害な図書類の販売等の規制は、青少年の健全な育成を図るため青少年を取り巻く環境を整備するという正当な立法目的を達成するために必要かつ合理的な規制であるということができ、これが憲法二一条一項に違反するものでないことは、当裁判所の各大法廷判決(昭和二八年(あ)第一七一三号同三二年三月一三日判決・刑集一一巻三号九九七頁、昭和三九年(あ)第三〇五号同四四年一〇月一五日判決・刑集二三巻一〇号一二三九頁、昭和五七年(あ)第六二一号同六〇年一〇月二三日判決・刑集三九巻六号四一三頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和六二年(あ)第一四六二号平成元年九月一九日第三小法廷判決・刑集四三巻八号七八五頁参照)。
…本件条例一三条一項一号所定の青少年に有害な図書類の概念は、同号に定義されたところに照らせば、不明確であるということはできない。
…本件フロッピーディスクは、簡単なクイズに答えて女子高校生の衣服を脱がせるというアニメーション画面を使用したものであって、画像がかなり写実的であり、画面上のポインタで当該女子高校生の身体に触れると、遊戯者に反応するかのように画面上にせりふと表情が現れるようになっているというのであるから、本件条例一三条一項一号にいう「著しく青少年の性的感情を刺激し、その健全な成長を阻害するおそれのあるもの」に当たるということができる。

【判例のポイント】
1.本件条例による青少年に有害な図書類の指定は、憲法21条2項前段の「検閲」に当たらない。
2.本件条例による青少年に有害な図書類の販売等の規制は、青少年の健全な育成を図るため青少年を取り巻く環境を整備するという正当な立法目的を達成するために必要かつ合理的な規制であり、憲法21条1項に違反しない。
3.本件条例の有害な図書類の概念(「著しく青少年の性的感情を刺激し、その健全な成長を阻害するおそれのあるもの」)は、漠然不明確ではない。

【ワンポイントレッスン】
 本件における対立利益は、「表現の自由 VS 青少年の健全育成」である。
 暴力や性描写を伴う表現に対する規制につき、欧米に比べて日本は遅れていると言われ、今日においても激しい議論がおこなわれている。
 ただ、「有害図書」と「青少年への精神的悪影響」の因果関係を科学的に立証するのは難しく(不可能?)、規制が必要かつ合理的といえるかの判断は困難である。
 抽象的には、発表者の「表現の自由」や、読者の大人の「知る権利」を不当に侵害しないよう、有害図書の規制は、できるたけ明確かつ適正な手続の下で行われることが要請される、とは言えよう(芦部・憲法P178−179参照)。

【試験対策上の注意点】
1.択一試験対策として、最判平元.9.19=百選 I 57=判例六法・憲法21条10番とセットで押さえておこう。
2.論文試験の素材ともなりうるが、国 I 法律職・論文では平成12年に表現の自由から出題された(モデル小説の出版差止)ので、13年度の出題可能性は低い。

(沖田)

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