【判旨】
「債権が質権の目的とされた場合において、質権設定者は、質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り、当該債権に基づき当該債権の債務者に対して破産の申立てをすることはできないものと解するのが相当である。
けだし、質権の目的とされた債権については、原則として、質権設定者はこれを取り立てることができず、質権者が専ら取立権を有すると解されるところ(民法三六七条参照)、当該債権の債務者の破産は、質権者に対し、破産手続による以外当該債権の取立てができなくなるという制約を負わせ(破産法一六条参照)、また、本件のように当該債権の債務者が株式会社である場合には、会社の解散事由となって(商法四〇四条一号参照)、質権者は破産手続による配当によって満足を受けられなかった残額については通常その履行を求めることができなくなるという事態をもたらすなど、質権者の取立権の行使に重大な影響を及ぼすものであるからである。」
【判例のポイント】
債権が質権の目的とされた場合において、質権設定者は、質権者の同意があるなどの特段の事情のない限り、当該債権に基づき当該債権の債務者に対して「破産の申立て」をすることはできない。
【ワンポイントレッスン】
「質」といったら宝石などを目的物に質権を設定するのが典型だが、「債権」に質を設定するのが「債権質」である。ここで、
A:債権質の目的たる債権の債「務」者
B:質権設定者=Cから金を借りた人=債権質の目的たる債権の債「権」者
C:質権者=Bに金を貸した人=債権質の目的たる債権の取立権者
と仮定する。
Aが破産すると、Cは破産手続による以外当該債権の取立てができなくなるという制約を受け、Cの取立権の行使に重大な影響を及ぼす。
よって、Cの同意があるなど特段の事情のない限り、BはAに対して破産申立てはできない、というのが判例の立場である。
【試験対策上の注意点】
択一対策として判例の結論を押さえておけば足りる。