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今年狙われる重要判例
民法6 (5/8)
(最判平11.11.30=平11重判・民法6=判例六法・民法372条8番)

 買戻特約付売買の目的不動産に設定された抵当権に基づく、買戻代金債権に対する物上代位権行使ができるか、が争われた。

[参考]*便宜上、条文を一部省略
民法372条
   …第三百四条…の規定は抵当権に之を準用す。
同304条1項
 先取特権は其目的物の売却、賃貸、滅失又は毀損に因りて債務者が受くべき金銭其他の物に対しても之を行ふことを得。
同579条
 不動産の売主は売買契約と同時に為したる買戻の特約に依り買主が払ひたる代金及び契約の費用を返還して其売買の解除を為すことを得。
同581条1項
 売買契約と同時に買戻の特約を登記したるときは買戻は第三者に対しても其効力を生ず。
【論点】
 買戻代金債権に対する物上代位の可否

【判旨】
買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は、抵当権に基づく物上代位権の行使として、買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができると解するのが相当である。
 けだし、買戻特約の登記に後れて目的不動産に設定された抵当権は、買戻しによる目的不動産の所有権の買戻権者への復帰に伴って消滅するが、抵当権設定者である買主やその債権者等との関係においては、買戻権行使時まで抵当権が有効に存在していたことによって生じた法的効果までが買戻しによって覆滅されることはないと解すべきであり、また、買戻代金は、実質的には買戻権の行使による目的不動産の所有権の復帰についての対価と見ることができ、目的不動産の価値変形物として、民法三七二条により準用される三〇四条にいう目的物の売却又は滅失によって債務者が受けるべき金銭に当たるといって差し支えないからである。」

【判例のポイント】
 買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は、抵当権に基づく「物上代位」権の行使として、買戻権の行使により買主が取得した「買戻代金債権」を差し押さえることができる。

【ワンポイントレッスン】
 時系列に沿って整理してみよう。

(1) A(買主)とB(売主)が不動産売買契約を結び、買戻特約の登記をした。
(2) Aが当該不動産にCのために抵当権を設定した。
(3) Bが買戻権を行使した(Aに代金・契約の費用を返還しなければならない)。AはBに対して買戻代金債権を取得する。Cの抵当権は消滅する。
(4) CはAが取得した買戻代金債権に対して物上代位できるか?

 …以上のような場合、先に登記した買戻特約はCの抵当権に対抗できるため(581条)、買戻権が行使されると、Cの抵当権が消滅し、Cの債権回収が困難となってしまう。
 そこで、本判決は、C の買戻代金債権に対する物上代位を認めた。
 不動産→買戻代金、へと価値が変形したと考えられるからである。

【試験対策上の注意点】
 「物上代位」は重要論点である。択一試験対策として押さえておこう。

(沖田)

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