【判旨】
「…右の事実関係の下においては、信用状発行銀行である相手方は、輸入商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、転売された輸入商品の売買代金債権を差し押さえることができ、このことは債務者…が破産宣告を受けた後に右差押えがされる場合であっても異なるところはないと解するのが相当である。」
【判例のポイント】
1.動産「譲渡担保」権に基づく「物上代位」権の行使として、転売された当該動産の売買代金債権を差し押さえることができる。
2.以上は、債務者が「破産宣告」を受けた後に差押えがされる場合であっても、異なるところはない。
【ワンポイントレッスン】
☆以下、「譲渡担保」の基礎知識があることを前提に解説するので、あやふやな人は基本書に戻って欲しい
1.譲渡担保の物上代位
不動産の「抵当権」については、物上代位を認める明文規定があるが(372・304条)、動産抵当とも言える「動産譲渡担保」は慣習上認められた物権であるため、そもそも物上代位ができるのか問題となる。
この点、譲渡担保の基本的性質につき「所有権的構成」をとれば、譲渡担保権者が取得するのは「所有権」であるから、「担保権」に認められる「物上代位」を認めるのは理論的に困難である。
これに対して、「担保権的構成」をとれば、譲渡担保権も「担保権」であるから、価値権的追及権として当然にその「物上代位」性が承認される。
最高裁の立場は明確ではないが(一般には所有権的構成といわれる)、近江幸治教授は、本判決は「本事案上、譲渡担保の物上代位性を承認することを実質的に妥当とすることから、担保権的構成を背景に論じている」と評価する(重判・解説)。
2.破産宣告と304条但書
担保権者が物上代位するには、304条但書「払渡又は引渡前に差押を為すことを要す」とあるが、債務者(=譲渡担保設定者)が破産宣告を受けた場合が問題となる。
この点、物上代位権は債務者が破産宣告を受けた場合も行使できる、とするのが通説・判例である。
先取特権の事例だが、最判昭59.2.2(判例六法・民法304条1番)は、債務者が破産宣告を受けた場合においても、その効果は所有財産に対する破産者の管理処分権が剥奪されること、破産債権者による個別的な権利行使が禁止されることにとどまり、これにより破産者の財産の所有権が破産財団又は破産管財人に譲渡されたことになるものではないから、動産売買の先取特権者は、債務者(買主)が破産宣告を受けた後においても、その動産転売代金債権につき物上代位権を行使して差押・転付命令を求めることができる、と判示した。
【試験対策上の注意点】
「譲渡担保」は初学者には分かりづらいかもしれないが、判例の結論を択一対策として押さえておこう。