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今年狙われる重要判例
商法1 (5/19)
(最判平11.12.14=平11重判・商法1=判例六法・商法203条3番)

 共有株式の権利行使の指定を欠く場合に、会社側から議決権行使を認めることができるか、問題となった。

[参考]
商法203条2項
   株式が数人の共有に属するときは共有者は株主の権利を行使すべき者一人を定むることを要す。
民法252条
 共有物の管理に関する事項は前条の場合を除く外各共有者の持分の価格に従ひ其過半数を以て之を決す。但保存行為は各共有者之を為すことを得。
【論点】
 共有株式の権利行使(商法203条)

【判旨】
「株式を共有する数人の者が株主総会において議決権を行使するに当たっては、商法二〇三条二項の定めるところにより、右株式につき「株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人」(以下「権利行使者」という。)を指定して会社に通知し、この権利行使者において議決権を行使することを要するのであるから、権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くときには、共有者全員が議決権を共同して行使する場合を除き、会社の側から議決権の行使を認めることは許されないと解するのが相当である。
 なお、共有者間において権利行使者を指定するに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができると解すべきであるが…このことは右説示に反するものではない。
 これを本件についてみると、原審が適法に確定したところによれば、(一)亡林斗用の有していた本件株式は、被上告人を含む亡林斗用の共同相続人が相続により準共有するに至ったが、本件株主総会に先立ち、権利行使者の指定及び上告人に対する通知はされていない、(二)本件株主総会には、右共同相続人全員が出席したが、被上告人が本件株式につき議決権の行使に反対しており、議決権の行使について共同相続人間で意思の一致がなかった、というのである。
 そうすると、本件株式については、権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くものであるから、全員が共同して議共同相続人決権を行使したものとはいえない以上、たとい上告人が本件株式につき議決権の行使を認める意向を示していたとしても、本件株式については適法な議決権の行使がなかったものと解すべきである。
 したがって、本件株式について適法な議決権の行使がなく、本件株主総会決議は取り消されるべきであるとした原審の判断は、その結論において是認することができる。」

【判例のポイント】
 商法203条2項の権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠くときには、共有者全員が議決権を共同して行使する場合を除き、会社の側から議決権の行使を認めることは許されない。

【ワンポイントレッスン】
 判例の立場によれば、共有株式の権利行使の手順は以下のようになる。

(1) 共有者間で、持分の価格に従いその過半数をもって、権利行使者一人を決める(民法252条参照)。
(2) その旨を会社に通知する。
(3) 選ばれた権利行使者一人が、株主総会で議決権を行使する。
(4) 権利行使者の指定がない場合でも、共有者全員が議決権を共同して行使することは認められる。

 最後の例外に注意して欲しい。共有者各自が、自己の持分について、バラバラに議決権を行使することはできず、あくまで全員一致で共同行使しなければならない。

【試験対策上の注意点】
 商法203条については、新しい判例が多く、択一問題の選択肢が作りやすい論点である。
 判例六法の203条の判例に、一通り目を通しておくと万全である。

(沖田)

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