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今年狙われる重要判例
刑法5 (5/24)
(最決平11.10.20=平11重判・刑法9=判例六法なし)

 受託収賄罪の成否につき、内閣官房長官の職務権限の範囲が、問題となった(リクルート事件政界ルート)。

[参考]*便宜上、条文を一部省略
刑法197条1項
   公務員…が、その職務に関し、賄賂を収受…したときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
【論点】
 受託収賄罪(197条)と内閣官房長官の職務権限

【判旨】
「…原判決の認定によれば、被告人は、内閣官房長官として、株式会社リクルートの代表取締役である江副浩正らから、国の行政機関が国家公務員の採用に関し民間企業における就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力願いたい旨の請託を受け、賄賂を収受したというのである。
 内閣官房長官は、内閣法一三条三項により、「内閣官房の事務を統轄」するものとされ、内閣官房は、同法一二条二項により、「閣議に係る重要事項に関する総合調整その他行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整に関する事務を掌る」ものとされているところ、前記請託の内容は、国家公務員の採用という国の行政機関全体にわたる事項について適切な措置を採ることを求めるものであって、内閣官房の所掌する右事務に当たり、内閣官房長官の職務権限に属するということができるから、これと同旨の原判決の判断は、正当である。」

【判例のポイント】
 国の行政機関が国家公務員の採用に関し民間企業における就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力願いたい旨の請託の内容は、国家公務員の採用という国の行政機関全体にわたる事項について適切な措置を採ることを求めるものであって、内閣官房の所掌する事務に当たり、内閣官房長官の職務権限に属する。

【ワンポイントレッスン】
 賄賂罪が成立するには、公務員の「職務権限」に関するものであることが、要件となる。
 本件では簡単に言うと、リクルート関係者が、内閣官房長官に「中央官庁による学生の青田刈りを止めさせてくれ」とお願いし、青田刈り防止の措置をとることがその職務権限に属するか、問題となったわけである。
 本判決は、これを肯定し、受託収賄罪が成立するとした。

…余談だが、昨年度の国家 I 種では、人事院が「官庁訪問は1次試験合格発表後」と受験生に伝えたにもかかわらず、各省庁は事実上「青田刈り」を行い、多大な混乱が生じた。
 それを考えると、本事例で賄賂を贈った人は、実はイイ人だったりして?

【試験対策上の注意点】
 余裕のある人は、択一対策として押さえておこう。ただ、内容的に人事院としては出題したくない判例かも。

(沖田)

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