【判旨】
「取締役及び監査役を選任する株主総会決議が存在しないことの確認を求める訴訟の係属中に、後の株主総会決議が適法に行われ、新たに取締役等が選任されたときは、特別の事情のない限り、先の株主総会決議の不存在確認を求める訴えの利益は消滅すると解される。
しかし、取締役を選任する先の株主総会の決議が存在するものとはいえない場合においては、その総会で選任されたと称する取締役によって構成される取締役会の招集決定に基づき右取締役会で選任された代表取締役が招集した後の株主総会において新たに取締役を選任する決議がされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り、法律上存在しないものといわざるを得ず、この瑕疵が継続する限り、以後の株主総会において新たに取締役を選任することはできないこととなる…右は、後にされた決議が監査役を選任するものであっても、同様である。
そうすると、右のような事情の下で瑕疵が継続すると主張されている場合においては、後行決議の存否を決するためには先行決議の存否が先決問題となり、その判断をすることが不可欠である。
先行決議と後行決議がこのような関係にある場合において、先行決議の不存在確認を求める訴えに後行決議の不存在確認を求める訴えが併合されているときは、後者について確認の利益があることはもとより、前者についても、民訴法一四五条一項の法意に照らし、当然に確認の利益が存するものとして、決議の存否の判断に既判力を及ぼし、紛争の根源を絶つことができるものと解すべきである。」
【判例のポイント】
1.取締役・監査役選任に関する株主総会決議の不存在確認訴訟の係属中に、「後」の株主総会決議が「適法」に行われ、新たに取締役等が選任されたときは、特別の事情のない限り、「先」の株主総会決議の不存在確認を求める訴えの利益は消滅する。
2.その「先」の株主総会決議が存在するものとはいえない場合は、「後」の株主総会において新たに取締役を選任する決議がされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り、法律上存在しないものといわざるを得ない。
3.「後」行決議の存否を決するために「先」行決議の存否が先決問題となり、その判断をすることが不可欠な場合、「先」行決議の不存在確認を求める訴えに「後」行決議の不存在確認を求める訴えが併合されているときは、いずれについても、訴えの利益が認められる。
【ワンポイントレッスン】
時系列で整理してみよう。
(1)取締役Aらが、X日の株主総会で選任された。
(2)Aらが、代表取締役Bを選任した。
(3)Bが、株主総会を召集した。
(4)Y日の株主総会で、新たな取締役Cらが選任された。
上のような場合、X日の株主総会決議にそれが不存在となるような瑕疵があり、それが継続していれば、Y日のCらの選任決議までに至る一連の手続は全て法律上は存在しないものとなり、Y日の株主総会決議が有効かは、X日の決議の有効性にかかっている。
確認訴訟では、「訴えの利益」がなければ門前払い(却下)されるが、このような見地から、本件では、併合された「先」行決議不存在確認の訴えと「後」行決議不存在確認の訴えのいずれについても、訴えの利益が認められた。
【試験対策上の注意点】
「株主総会」の択一問題で出題される可能性がある。
判旨に民事訴訟法の用語が出ているが、商法の試験対策としては、判例の結論を丸暗記しておけば十分である。