【判旨】
1.原審(東京高判平11.2.24)
組合バッジ着用が就業規則違反であることを認定した上で、当該就業規則に基づく使用者の行った処分が「労働組合に対する嫌悪感の意図を決定的な動機として行われたと認められるときは、その使用者の行為は全体的に見て、労働組合に対する支配介入に当たる」とし、当該事例において使用者の行った処分及び賃金カットは、不当労働行為であると判示した。
2.上告審(最決平11.11.11)
「本件は、民訴法318条1項の事件にあたらない」として、上告を受理しないことを決定し、前記高裁判決が確定。
【判例のポイント】
1.組合バッジ着用は、職務専念義務違反・就業規則違反である。
2.当該就業規則に基づく使用者の行った処分が、労働組合に対する嫌悪感の意図を決定的な動機として行われたと認められるときは、その使用者の行為は全体的に見て、労働組合に対する支配介入に当たる。
3.当該事例において、使用者の行った処分及び賃金カットは不当労働行為(支配介入)に当たる。
【ワンポイントレッスン】
本件では、
(1)勤務時間中の組合バッジ着用が、職務専念義務違反・就業規則違反になるか
(2)それに基づく、懲戒処分が支配介入に当たるか
という、二点が問題となる。
本判決は、(1)について肯定しつつ、(2)について、本件懲戒処分は、労働組合に対する嫌悪感の意図を決定的な動機として行われたとして、支配介入に当たることを認めた。
簡単に言うと、形式的には懲戒処分の要件は満たしているが、本音は労働組合に対する嫌がらせだから、支配介入だ、というニュアンスである。
なお、JRでの組合バッジ着用に関しては、本判決(JR"東日本"事件)と反対の結論となった判例がある。
結局は、個別具体的事案に即して、会社側に「不当労働行為意思」が認められるかで、決まるという事になる。
〔関連判例〕JR"東海"事件
東京高判平9.1.30は、JRの職員である労働組合員による就業時間中の組合バッジの着用は、実質的に企業秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合を除き、職務専念義務、就業中の組合活動禁止、及び社員の服装の整正を定めた就業規則の規定に違反するところ、本件バッジ着用には実質的に企業秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるとはいえない上、JRにおいて職場規律の回復を図るためにバッジ着用を禁止することには合理的な理由があり、不当労働行為意思に基づくものともいえないので、バッジを着用した組合員に対して厳重注意処分と夏季手当の五パーセント減額を行ったことは、本条一号又は三号所定の不当労働行為には当たらない、と判示し、最判平10.7.17もこれを支持した(判例六法・労働組合法7条12番)。 |
【試験対策上の注意点】
「不当労働行為」は、労働法での頻出論点である。事案の概要と、判例の結論をしっかり押さえておこう。