【判旨】
「共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。
けだし、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。」
【判例のポイント】
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得る。
【ワンポイントレッスン】
親族・相続法上の行為が詐害行為取消権の対象となるかにつき、判例の立場を紹介する(判例六法・民法424条25〜29番)。 *○=対象となる、×=ならない
1.離婚に伴う財産分与(最判昭58.12.19)
原則 ×
例外 ○
(768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消される)
2.離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意(最判平12.3.9)
1.と同じ
3.離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意(最判平12.3.9)
原則 ×
例外 ○
(配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為取消権行使の対象となり得る)
4.遺産分割協議(今回の判例)
○
5.相続放棄(最判昭49.9.20)
×
【試験対策上の注意点】
詐害行為取消権は、択一試験における頻出論点である。判例の立場をしっかり押さえておこう。