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今年狙われる重要判例
民法9 (6/5)
(最判平11.1.29=平11重判・民法9=判例六法・民法466条13番)

 将来発生すべき債権(事例では医師の診療報酬債権)を目的とする包括的債権譲渡契約が有効かが、争われた。

【論点】
 将来発生すべき債権を目的とする包括的債権譲渡(466条)

【判旨】
「将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の有効性については、次のように解すべきものと考える。
(一)
 債権譲渡契約にあっては、譲渡の目的とされる債権がその発生原因や譲渡に係る額等をもって特定される必要があることはいうまでもなく、将来の一定期間内に発生し、又は弁済期が到来すべき幾つかの債権を譲渡の目的とする場合には、適宜の方法により右期間の始期と終期を明確にするなどして譲渡の目的とされる債権が特定されるべきである。
…将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約にあっては、契約当事者は、譲渡の目的とされる債権の発生の基礎を成す事情をしんしゃくし、右事情の下における債権発生の可能性の程度を考慮した上、右債権が見込みどおり発生しなかった場合に譲受人に生ずる不利益については譲渡人の契約上の責任の追及により清算することとして、契約を締結するものと見るべきであるから、右契約の締結時において右債権発生の可能性が低かったことは、右契約の効力を当然に左右するものではないと解するのが相当である。
(二)
 もっとも、契約締結時における譲渡人の資産状況、右当時における譲渡人の営業等の推移に関する見込み、契約内容、契約が締結された経緯等を総合的に考慮し、将来の一定期間内に発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について、右期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、又は他の債権者に不当な不利益を与えるものであると見られるなどの特段の事情の認められる場合には、右契約は公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は一部が否定されることがあるものというべきである。」

【判例のポイント】
1.将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の締結時において、右債権発生の可能性が低かったことは、右契約の効力を当然に左右するものではない。
2.特段の事情の認められる場合には、将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は、公序良俗に反する等、その効力が否定されることがある。
 *特段の事情
 期間の長さ等の契約内容が、(1)譲渡人の営業活動等に対して社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加える、(2)他の債権者に不当な不利益を与えるものであると見られる

【ワンポイントレッスン】
 将来発生すべき債権の譲渡自体は、古くから判例で認められていたが(大判昭9.12.28=双書C・P213)、その限界が問題となる。
 本判決は、債権発生の可能性が低くても「契約の効力を当然に左右するものではない」として、かなり緩やかに有効性を認め、当該事例では債権譲渡時から6年以上経過した後に発生した債権にも効力が及ぶとした。
 将来債権の譲渡は、実務上「担保」目的で行われることに重要な意義があり、実務界の要望に沿った形の判決といえる。

【試験対策上の注意点】
 択一試験対策として押さえておこう。国 I 受験生は、公序良俗違反となる「特段の事情」の具体例にも注意。

(沖田)

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