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今年狙われる重要判例
行政法6 (6/9)
(最判平11.10.22=平11重判・行政法1)

 A社が特許権を有する医薬品を輸入するために、B社は、医薬品輸入販売業の許可を受けるのに必要である、輸入物に対する厚生大臣の承認を得た。特許法は、必要な処分を受けるために「特許発明の実施をすることができなかった期間」があったときは、特許権の存続期間の延長を認めており、この延長が認められるかが争われた(その後、合併によりA社の権利を承継したXが上告)。

[参考]
 (1)特許権の設定登録が平成元年6月28日、(2)薬事法所定の承認が平成3年6月28日付、(3)B社の承認書の受領が平成3年7月11日であった。「特許発明の実施をすることができなかった期間」につき、A社は、(1)〜(3)の2年11日として、期間の延長登録出願をしたが、拒絶査定は、当該期間を(1)〜(2)の1年364日とし、A社の延長を求める期間がこれを超えているとして旧特許法67条の3第1項4号(現3号)に基づくものであった。当時、特許法67条3項は、安全性の確保等を目的とする法律の規定による処分で、相当期間を要するものとして政令で定める処分を受ける必要があるために、特許発明の実施をすることが2年以上できなかったときは、5年を限度として延長登録の出願を認めることとしていた(平成11年に2年以上の要件は削除)。
【論点】
 特許権の存続期間の延長登録の理由となる薬事法所定の承認を受けるために特許発明を実施することができなかった期間の終期はどの時点か。

【判旨】
 一 旧特許法67条3「項の延長登録の理由となる処分は政令で定めるものに限られるところ、薬事法所定の医薬品の製造承認及び輸入承認並びにこれらの承認事項一部変更承認(以下、これらを「承認」という。)はこれに当たる(特許法施行令1条の3)。」
 二 「医薬品の製造又は輸入を業として行うためには、薬事法に基づく許可を受けなければならないが(薬事法12条、22条)、その許可の申請者が、製造又は輸入しようとする医薬品につき、承認を受けていないときは、その品目について右許可を受けることができない(同法13条1項、23条)。承認は、医薬品の有効性、安全性を公認する行政庁の行為であるが、これによって、その承認の申請者に製造業等の許可を受け得る地位を与えるものであるから、申請者に対する行政処分としての性質を有するものということができる。そうすると、承認の効力は、特別の定めがない限り、当該承認が申請者に到達した時、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた時に発生すると解するのが相当である。」
 「したがって、延長登録の理由となる処分としての承認は、申請者に到達した時にその効力が発生するものというべきである。」
 二 「右のように、延長登録の理由となる処分である薬事法所定の承認が申請者に到達した時に、承認の効力が生じ、承認を受けることが必要であるために特許発明の実施をすることができない状態が解除されることになるから、その効力が生じた日は、旧法67条3項、67条の3第1項4号所定の処分を受けることが必要であるために特許発明の実施をすることができなかった期間には含まれず、右期間の終期は、承認が申請者に到達した日の前日となる。」
 三 「以上のとおりであるから、旧法67条の3第1項4号にいう「特許発明の実施をすることができなかった期間」は、医薬品に関しては、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間であると解すべきものである。」

【判例のポイント】
1.薬事法14条に基づく輸入承認処分は、申請者に到達したときにその効力を生じる。
2.旧特許法67条の3第1項4号にいう「特許発明の実施をすることができなかった期間」は、医薬品に関しては、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間である。

【ワンポイントレッスン】
1.薬事法における厚生大臣の輸入承認には、処分性が認められる。
2.行政処分の効力は、意思表示に関する民法の一般原則に従い、相手方に到達したときに効力が発生すると解するのが判例・通説である(最判昭29.8.24)。この場合の「承認」は、基本的な構造としては許可の申請者自身が承認を得ることが必要であり、相手方のある行政処分として、申請者に到達することがその効力発生の要件となると解される。
3.承認の効力が発生した当日は、「特許発明の実施をすることができなかった期間」には含まれないとするのが本判決である。

【試験対策上の注意点】
 行政処分の効力については手薄になりがちだが、百選や判例六法に出ている判例は、試験前までに確認しておきたい。

(大島)

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