【判旨】
「所論は、司法書士法一九条一項、二五条一項は、憲法二二条一項に違反すると主張する。
しかし、司法書士法の右各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法二二条一項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和三三年(あ)第四一一号同三四年七月八日大法廷判決・刑集一三巻七号一一三二頁、最高裁昭和四三年(行ツ)第一二〇号同五〇年四月三〇日大法廷判決(=薬事法距離制限違憲判決:筆者注)・民集二九巻四号五七二頁)の趣旨に徴し明らかである。
所論は理由がない。
…なお、行政書士が代理人として登記申請手続をすることは、行政書士の正当な業務に付随する行為に当たらないから、行政書士である被告人が業として登記申請手続について代理した本件各行為が司法書士法一九条一項に違反するとした原判断は、正当である。」
【判例のポイント】
1.司法書士法の当該規定(登記業務を司法書士に独占させている)は、公共の福祉に合致した合理的なもので、憲法22条1項に違反するものでない。
2.行政書士が代理人として登記申請手続をすることは、行政書士の正当な業務に付随する行為に当たらない。
【ワンポイントレッスン】
憲法22条1項で保障される、職業選択の自由(広義)は、
職業を決定する自由=狭義の職業選択の自由
その職業を行う自由=職業活動の自由
とに分けられる。
本件では、行政書士が登記業務をやりたくてもできないという点で、「職業活動の自由」の制約が問題となっている。
本判決では、薬事法距離制限違憲判決(最大判昭50.4.30)が挙げられているが、「目的二分論」を採用したのかは不明である。
仮に採用したとすれば、「登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ」という文言から、司法書士法による当該規制を「消極目的規制」と位置付けたものと推測される(重判・解説)。
この点、複雑な議論がなされているが、試験対策上は深入りする必要はない。
【試験対策上の注意点】
択一対策として、判例の立場を押さえておけば足りる。