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今年狙われる重要判例
民法8 (4/10)
最決平12.5.1=平12重判・民法9=判例六法・民法820条21番

 婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合に、子と同居していない親と子の面接交渉について、家庭裁判所が相当な処分を命じることができるか、問題となった。

[参考]*便宜上、条文を加筆・省略
民法766条
1項  父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議でこれを定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2項  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
同820条
   親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
家事審判法9条1項
 家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う…
乙類…
 四 民法第七百六十六条第一項又は第二項…の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
【論点】
 別居している親と子の面接交渉についての家庭裁判所の相当な処分(民法766条類推)

【判旨】
「父母の婚姻中は、父母が協働して親権を行い、親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うものであり(民法818条3項、820条)、婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉することは、子の監護の一内容であるということができる。
 そして、別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、民法766条を類推適用し、家事審判法9条1項乙類4号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができると解するのが相当である。」

【判例のポイント】
 婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉することは、「子の監護」の一内容であり、右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、「民法766条を類推適用」し、家事審判法9条1項乙類4号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができる。

【ワンポイントレッスン】
 まず、「離婚」の場合は、子の監護につき家庭裁判所が相当な処分をできることは、民法766条に明文規定がある。

 しかし、本件では、父母が別居し、事実上婚姻関係が破綻しているものの、離婚しているわけではないため、その根拠が問題となった。
 その根拠規定をめぐり従来争いがあったが、最高裁は「民法766条類推」肯定説をとり、実務上はこれで一件落着となった。

 この問題に関しては、新たな立法によって解決するのがスジであり、平成8年の民法改正要綱で改正提案がなされている。

【試験対策上の注意点】
 択一対策として、結論を押さえておけば足りる。重要度はあまり高くない。

(大剛寺)

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