The Future [ HOME今年狙われる重要判例>刑法1 ]
今年狙われる重要判例
刑法1 (5/20)
最決平12.2.24=H12重判・刑法1=判例六法なし

 人家と田畑が混在する地域内にあり、周囲半径約200メートル以内に人家が約10軒ある場所が、鳥獣保護及狩猟に関する法律16条が銃猟を禁止する「人家稠密の場所」に当たるか、争われた。

【論点】
 刑法の解釈
 罪刑法定主義(憲法31条)

【判旨】
「…なお、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律一六条が「市街其ノ他人家稠密ノ場所」等における銃猟を禁止しているのは、このような場所において銃器を使用して狩猟をすることが他人の生命、身体等に危険を及ぼすおそれがあるので、これを防止することなどを目的とするものである。
 したがって、同条にいう「人家稠密ノ場所」に該当するか否かは、右のような同条の趣旨に照らして判断すべきところ、原判決の認定及び記録によると、被告人が狩猟のため散弾銃を発射した場所は人家と田畑が混在する地域内にあり、発射地点の周囲半径約二〇〇メートル以内に人家が約一〇軒あるなどの状況が認められるのであるから、右場所が「人家稠密ノ場所」に当たるとした原判断は相当である。」

【判例のポイント】
1.鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条が「市街其ノ他人家稠密ノ場所」等における銃猟を禁止しているのは、このような場所において銃器を使用して狩猟をすることが他人の生命、身体等に危険を及ぼすおそれがあるので、これを防止することを趣旨とする。
2.人家と田畑が混在する地域内にあり、周囲半径約200メートル以内に人家が約10軒あるような場所は、同条が銃猟を禁止する「人家稠密の場所」に当たる。

【ワンポイントレッスン】
 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条違反で起訴された被告人の弁護人は、本件発射場所は「人家稠密の場所」といえず、「刑法の謙抑性」の原理や「罪刑法定主義」の精神からも、有罪とした原判決は同条の解釈を誤り、憲法31条に違反する、と主張した。
 しかし、最高裁はこれを退け、原判決を維持した。
 本事例では、射程距離内に現実に人が存在したわけではなく、「具体的な危険」はなかったようであるが、最高裁は鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条を、公共に対する「抽象的危険犯」と解して、本件事例は同条に該当すると判断したといえる。

【試験対策上の注意点】
 一度見ておけば足りる。特別刑法の判例なので、重要度は高くない。

(大剛寺)

お問い合わせ等は info@thefuture.co.jp まで
©2002 The Future