【判旨】
「…なお、本件において妨害の対象となった職務は、公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務であり、右事務は、強制力を行使する権力的公務ではないから、右事務が刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)233条、234条にいう「業務」に当たるとした原判断は、正当である…」
【判例のポイント】
公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務は、「強制力を行使する権力的公務」ではないから、刑法233条、234条にいう「業務」に当たる。
【ワンポイントレッスン】
本決定は、最高裁が初めて、「公務」について「偽計・業務妨害罪」(233条)
の成立を認めた点で、注目された。
業務妨害罪の「業務」は、民間企業の業務だけではなく、「公務」も含むか。
公務について、暴行・脅迫を手段とする場合は「公務執行妨害罪」(95条)が存在するが、それ以外の手段による妨害もあり、問題となる。
この点、最決昭62.3.12(判例六法・刑法234条10番)は、「県議会の委員会の条例案採決事務」は、強制力を行使する権力的公務ではないから、234条にいう「業務」に当たる、とする。
本決定も「公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務」は、強制力を行使する権力的公務ではないから、刑法233・234条にいう「業務」に当たる、とした。
つまり、最近の最高裁の立場は以下のようになる。
|
業務妨害罪(233・234条) |
強制力を行使する・権力的公務 |
× |
強制力を行使しない・権力的公務 |
○ |
非権力的・現業的公務 |
○ |
【試験対策上の注意点】
1.有名論点に関する判例であり、出題可能性が高い。
2.公務と業務妨害罪については、理論問題にも注意。