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今年狙われる重要判例
刑法4 (5/30)
最決平12.2.17=H12重判・刑法8=判例六法・刑法234条11番

 公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務が、業務妨害罪にいう「業務」に当たるか、問題となった。

[参考]
刑法233条
   虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
同234条
 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
【論点】
 業務妨害罪(刑法234条)にいう「業務」と公務

【判旨】
「…なお、本件において妨害の対象となった職務は、公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務であり、右事務は、強制力を行使する権力的公務ではないから、右事務が刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)233条、234条にいう「業務」に当たるとした原判断は、正当である…」

【判例のポイント】
 公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務は、「強制力を行使する権力的公務」ではないから、刑法233条、234条にいう「業務」に当たる。

【ワンポイントレッスン】
 本決定は、最高裁が初めて、「公務」について「偽計・業務妨害罪」(233条)
の成立を認めた点で、注目された。

 業務妨害罪の「業務」は、民間企業の業務だけではなく、「公務」も含むか。
 公務について、暴行・脅迫を手段とする場合は「公務執行妨害罪」(95条)が存在するが、それ以外の手段による妨害もあり、問題となる。

 この点、最決昭62.3.12(判例六法・刑法234条10番)は、「県議会の委員会の条例案採決事務」は、強制力を行使する権力的公務ではないから、234条にいう「業務」に当たる、とする。

 本決定も「公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務」は、強制力を行使する権力的公務ではないから、刑法233・234条にいう「業務」に当たる、とした。

 つまり、最近の最高裁の立場は以下のようになる。

業務妨害罪(233・234条)
強制力を行使する・権力的公務 ×
強制力を行使しない・権力的公務
非権力的・現業的公務

【試験対策上の注意点】
1.有名論点に関する判例であり、出題可能性が高い。
2.公務と業務妨害罪については、理論問題にも注意。

(大剛寺)

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