【判旨】
「論旨は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由として最高裁判所に上告をすることを許容しない民訴法312条及び318条が憲法32条に違反するというにある。
しかしながら,いかなる事由を理由に上告をすることを許容するかは審級制度の問題であって,憲法が81条の規定するところを除いてはこれをすべて立法の適宜に定めるところにゆだねていると解すべきことは,当裁判所の判例とするところである…
その趣旨に徴すると,所論の民訴法の規定が憲法32条に違反するものでないことは明らかである。」
【判例のポイント】
1. いかなる事由を理由に、最高裁へ上告をすることを許容するかは「審級制度」の問題であって、憲法は81条の規定するところを除いては、これをすべて立法の適宜に定めるところにゆだねている。
2.民訴法312条・318条の規定は、憲法32条に違反するものでない。
【ワンポイントレッスン】
1.最高裁への上告
憲法違反→312条により、原則として認められる。
法令違反→318条により、上告受理決定がなされた場合に例外的に認められる。
憲法問題について、原則として上告が認められるのは、違憲審査につき最高裁を終審裁判所と定める、憲法81条の要請による。
憲法問題など312条の上告理由に該当しない場合については、最高裁により上告受理決定(318条)がなされた場合に認められる。つまり、「天下の最高裁の審判を受けたい」と熱望しても、最高裁に「ダメ」と言われたら、終わりである。
2.審級制度と裁判を受ける権利(憲法32条)
最高裁は、審級制度は、憲法81条の要請を除き、合理的範囲内である限り、立法政策の問題である、との立場をとる。
学説も、憲法32条は「審級制度」について法律が憲法81条の範囲内で政策的に定めることを想定し、かかる制約のもとで裁判を受ける権利を保障したため、審級制度上の考慮から法律で上告が制限されても、裁判を受ける権利の侵害にはならない、とするのが通説的見解である。
なお、近年、憲法32条が審級制度の内容に対し憲法上の制約を課している、と主張する学説もあるが、受験対策上は深入りする必要はない。
3.上告受理と裁判を受ける権利(憲法32条)
確かに、理想としては、希望者全員に上告を認めたほうが、裁判を受ける権利が存分に保障される。
しかし、たった15名の最高裁・裁判官の処理能力には物理的限界があり、また、裁判所は国民の血税で運営されているから訴訟経済も重要である。最高裁が、いちいち些細な事件にまで関わっていたら、真に取り組むべき憲法上の人権問題が、お座なりになってしまう。
よって、フィルターをかける必要性は否定できず、318条は合憲と解される。
【試験対策上の注意点】
択一対策として、判例の立場を丸暗記しておけば足りる。