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今年狙われる重要判例
民法6 (4/24)
(最判平13.10.25=H13重判・民法6=判例六法・民法372条10番)

 他の抵当権者が既に物上代位権に基づき(債務者の有する)賃料債権を差し押さえている場合に、抵当権者は、「配当要求」(民事執行法)の方法で優先弁済を受けることができるか、問題となった。

[参考]
民法372条
   …第三百四条…の規定は抵当権に之を準用す。
民法304条1項
   先取特権〔抵当権〕は先取特権は其目的物の売却、賃貸、滅失又は毀損に因りて債務者が受くべき金銭其他の物に対しても之を行ふことを得。但先取特権者〔抵当権者〕は其払渡又は引渡前に差押を為すことを要す。
民事執行法154条1項
   執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。
民事執行法193条1項
   第百四十三条に規定する債権及び第百六十七条第一項に規定する財産権…を目的とする担保権の実行は、担保権の存在を証する文書…が提出されたときに限り、開始する。担保権を有する者が目的物の売却、賃貸、滅失若しくは損傷…により債務者が受けるべき金銭その他の物に対して民法その他の法律の規定によつてするその権利の行使についても、同様とする。
【論点】
 抵当権者の物上代位(民法372条・304条)と配当要求(民事執行法)

【判旨】
「抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者は、他の債権者による債権差押事件に配当要求をすることによって優先弁済を受けることはできないと解するのが相当である。
 けだし、民法372条において準用する同法304条1項ただし書の「差押」に配当要求を含むものと解することはできず、民事執行法154条及び同法193条1項は抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者が配当要求をすることは予定していないからである。」

【判例のポイント】
 抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者は、他の債権者による債権差押事件に「配当要求」をすることによって優先弁済を受けることはできない。

【ワンポイントレッスン】
 通常であれば、抵当権者は、物上代位権の行使として、自ら(債務者の有する賃料債権を)差し押えることにより、優先弁済を受ける(民法304条1項但書参照)。
 本件では、他の抵当権者が既に物上代位権に基づき賃料債権を差し押さえている場合に、抵当権者は、「配当要求」(民事執行法参照)の方法で優先弁済を受けることができるか、問題となった。

 最高裁は、結論としてはこれを否定し、その理由として、民法304条1項但書の「差押」に配当要求を含むものと解することはできない、ことなどをあげている。
 発想としては、肯定説・否定説両方ありうるのだが、最高裁は否定説をとり、実務上の手続を明確にした。
 つまり、抵当権者は優先弁済を受けたかったら、自ら差押さえをしろ、ということである。

【試験対策上の注意点】
 物上代位は頻出論点である。最高裁の結論を覚えておこう。

(大剛寺)

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