【判旨】
「抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者は、他の債権者による債権差押事件に配当要求をすることによって優先弁済を受けることはできないと解するのが相当である。
けだし、民法372条において準用する同法304条1項ただし書の「差押」に配当要求を含むものと解することはできず、民事執行法154条及び同法193条1項は抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者が配当要求をすることは予定していないからである。」
【判例のポイント】
抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者は、他の債権者による債権差押事件に「配当要求」をすることによって優先弁済を受けることはできない。
【ワンポイントレッスン】
通常であれば、抵当権者は、物上代位権の行使として、自ら(債務者の有する賃料債権を)差し押えることにより、優先弁済を受ける(民法304条1項但書参照)。
本件では、他の抵当権者が既に物上代位権に基づき賃料債権を差し押さえている場合に、抵当権者は、「配当要求」(民事執行法参照)の方法で優先弁済を受けることができるか、問題となった。
最高裁は、結論としてはこれを否定し、その理由として、民法304条1項但書の「差押」に配当要求を含むものと解することはできない、ことなどをあげている。
発想としては、肯定説・否定説両方ありうるのだが、最高裁は否定説をとり、実務上の手続を明確にした。
つまり、抵当権者は優先弁済を受けたかったら、自ら差押さえをしろ、ということである。
【試験対策上の注意点】
物上代位は頻出論点である。最高裁の結論を覚えておこう。