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今年狙われる重要判例
民法9 (4/30)
(最判平13.11.27=H13重判・民法9=判例六法・467条8)

 指名債権譲渡の「予約」に対し確定日付ある債務者の承諾がなされた場合、予約完結による債権譲渡について第三者対抗力があるのか、問題となった。

[参考]
民法467条1項
   指名債権の譲渡は譲渡人が之を債務者に通知し又は債務者が之を承諾するに非ざれば之を以て債務者其他の第三者に対抗することを得ず。
2項
   前項の通知又は承諾は確定日附ある証書を以てするに非ざれば之を以て債務者以外の第三者に対抗することを得ず。

【論点】
 指名債権譲渡の予約に対する確定日付ある債務者の承諾と第三者対抗力(467条)

【判旨】
「1 本件は、上告人に本件預託金を預託し、その経営に係るゴルフ場及びその附帯施設の優先的利用権を内容とする本件ゴルフクラブ会員権を取得した訴外会社に対する滞納処分として、本件ゴルフクラブ会員権の差押えをした被上告人が、本件預託金の返還事由の発生後、上告人に対してその支払を求めるものであり、本件ゴルフクラブ会員権につき譲渡の予約をした上告補助参加人が被上告人の差押えに先立って予約完結権を行使したことによる譲渡の効力をもって被上告人に対抗し、本件預託金の返還請求権が上告補助参加人に帰属することを主張することができるかが争点となっている。

2 原審が適法に確定した事実関係等は、次のとおりである。
(1) 訴外会社は、昭和59年7月2日、上告人に対して本件預託金を預託し、本件ゴルフ会員権を取得した。
(2) 訴外会社と上告補助参加人とは、同月3日、訴外会社が上告補助参加人に対して負担する債務の担保として本件ゴルフクラブ会員権を上告補助参加人に譲渡することを予約し、同債務につき訴外会社に不履行があったときは、上告補助参加人の予約完結の意思表示により本件ゴルフクラブ会員権譲渡の本契約を成立させることができる旨の合意(以下「本件譲渡予約」という。)をし、そのころ、上告人は、確定日付のある証書により、本件譲渡予約を承諾した
(3) 上告補助参加人は、平成3年10月5日、訴外会社に対し、本件譲渡予約を完結する旨の意思表示をしたが、これによる本件ゴルフクラブ会員権の譲渡について、確定日付のある証書による上告人への通知又は上告人の承諾はされていない
(4) 被上告人は、平成3年10月9日、訴外会社に対する滞納処分として本件ゴルフクラブ会員権を差し押さえ、同日、差押通知書を上告人に送達した。
(5) 本件預託金の据置期間が経過し、平成8年6月1日訴外会社が解散して本件ゴルフクラブの会員資格を喪失したことから、訴外会社は、本件預託金の返還請求権を取得した。

3 民法467条の規定する指名債権譲渡についての債務者以外の第三者に対する対抗要件の制度は、債務者が債権譲渡により債権の帰属に変更が生じた事実を認識することを通じ、これが債務者によって第三者に表示され得るものであることを根幹として成立しているところ…指名債権譲渡の予約につき確定日付のある証書により債務者に対する通知又はその承諾がされても、債務者は、これによって予約完結権の行使により当該債権の帰属が将来変更される可能性を了知するに止まり、当該債権の帰属に変更が生じた事実を認識するものではないから、上記予約の完結による債権譲渡の効力は、当該予約についてされた上記の通知又は承諾をもって、第三者に対抗することはできないと解すべきである。」

【判例のポイント】
 指名債権譲渡の「予約」につき確定日付のある証書により債務者に対する通知又はその承諾がされても、債務者は、これによって予約完結権の行使により当該債権の帰属が将来変更される可能性を了知するに止まり、当該債権の帰属に変更が生じた事実を認識するものではないから、上記予約の完結による債権譲渡の効力は、当該「予約」についてされた上記の通知又は承諾をもって、第三者に対抗することはできない。

【ワンポイントレッスン】
 時系列で整理してみる。

  1. AとBが、ゴルフ会員権譲渡の「予約」につき合意。
  2. この予約について、確定日付のある証書により(ゴルフ会員権の債務者)Yは承諾した。
  3. Bが予約完結権を行使して、ゴルフ会員権がAからBに譲渡された。この債権譲渡について、債務者Yに確定日付のある証書による通知はなされず、承諾もなかった。
  4. Xが、Aに対する滞納処分として、本件ゴルフ会員権を差し押さえた。

 以上の事例だが、AからB、AからXに、債権が二重譲渡されたと考えると、わかりやすい。
 そうすると、Bが第三者対抗要件を備えていれば、Xに優先することになる。

 本件では、A→Bへの債権譲渡の「予約」について、確定日付のある証書による債務者の承諾はあったが、予約完結権の行使による「債権譲渡」そのものについて、確定日付のある証書による通知・承諾はなされていなかった。

 最高裁は結論として、「予約」についてされた通知・承諾をもって、債権譲渡を、第三者に対抗することはできない、とした。

 試験対策上は、判旨を丸暗記しておけば足りるが、上級者向けに補足すると、本判決は、前回紹介した最判平13.11.22(=H13重判・民法8=判例六法・467条7番)と組み合わせて、初めて理解できる。
 つまり、事前に第三者対抗要件を備えたいならば、予約型ではなく、譲渡担保による本契約型によるべきことになる(重判・解説を参照)。

【試験対策上の注意点】
 債権譲渡に関する、重要判例である。
 最判平13.11.22(=H13重判・民法8=判例六法・467条7番)とセットで、押さえておこう。

(大剛寺)

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