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今年狙われる重要判例
民法10 (4/30)
(最判平13.11.27=H13重判・民法10=判例六法・565条4番)

 数量指示売買において数量が「超過」する場合に、数量が「不足」する場合の規定である民法565条の類推適用により、売主が代金の増額請求できないか、問題となった。

[参考]
民法565条
   数量を指示して売買したる物が不足なる場合及び物の一部が契約の当時既に滅失したる場合に於て買主が其不足又は滅失を知らざりしときは前二条の規定を準用す。
563条1項
   売買の目的たる権利の一部が他人に属するに因り売主が之を買主に移転すること能はざるときは買主は其足らざる部分の割合に応じて代金の減額を請求することを得。

【論点】
 数量指示売買の数量超過事例への民法565条類推適用(否定)

【判旨】
「民法565条にいういわゆる数量指示売買において数量が超過する場合、買主において超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の合意を認め得るときに売主が追加代金を請求し得ることはいうまでもない。
 しかしながら、同条は数量指示売買において数量が不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における売主の担保責任を定めた規定にすぎないから、数量指示売買において数量が超過する場合に、同条の類推適用を根拠として売主が代金の増額を請求することはできないと解するのが相当である。
 原審の…判断…は、当事者間の合意の存否を問うことなく、同条の規定から直ちに売主の代金増額請求権を肯定するものであって、同条の解釈を誤ったものというべきであり、この判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

【判例のポイント】
1.民法565条の「数量指示売買」において数量が超過する場合、買主において超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の「合意」を認め得るときは、売主が追加代金を請求し得る。
2.しかし、数量指示売買において数量が超過する場合に、「565条の類推適用」を根拠として売主が代金の増額を請求することはできない。

【ワンポイントレッスン】
 数量指示売買において、数量が「不足」する場合は、民法565条により準用される563条明文で、「買主」の、代金「減額」請求が認められている。
しかし、数量が「超過」する場合の、「売主」の、代金「増額」請求についての規定はない。

 そこで、超過事例への565条の類推適用という考えがあるが、最高裁は結論として否定した。
 本件事例は、売主の履行補助者に当たる測量士が、数え間違いをした事例であった(まあ、どこの業界にもいい加減な人間が多いわけであるが、その測量士個人は保険でリスクを回避していたりする・・・)。
 つまり、売主は、自分の商品ぐらいちゃんと調べてから売りなさい、もし数量超過であってもそのような場合のリスクを買主に負担させるべきではない、という発想である。

[本判決のまとめ]
買主において超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の「合意」を認め得るとき
→売主は追加代金を請求できる

そのような合意がないとき
→売主は追加代金を請求できない(565条類推適用を根拠として増額請求できない)

【試験対策上の注意点】
 売買の担保責任の問題で、出題される可能性がある。条文知識もあらためて、確認しておくとよい。

(大剛寺)

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