官庁訪問日記

M君の官庁訪問日記

6月14日(月) 官庁訪問1日目
 6時。起床。慣れない早起き。睡眠不足。しかし、過度の緊張のせいか、目覚めはパッチリ。
 8時10分。人事院に到着。人事院の1階で各省庁のパンフレットが置いてあるところを発見。いくつかもらい、人事院のパンフをブースで読む。すると、50歳前後(?)の衛視の方がいらして話し掛けてくる。「官庁訪問かァ?」に始まり、「どこに住んでるの?」「どこ回るつもりなの?」と。「人事院が第一志望なんです」と言うと、「や〜、それはがんばれよっ!」と。少しリラックス。
 そうこうしているうちに9時に。人事課に行き、名前を記入。僕が最初の官庁訪問者。受付番号1番。そして、待合室に案内される。そこで、面接カードに記入。4時過ぎまでかけて準備した甲斐があり、記入はスムーズに終了。途中、数人が待合室に入って来て、面接カードに記入している。「こんな時間に来るなんて、みんなここが第一志望なんだろうなあ」「この中の誰かが採用され、誰かが去って行くんだよなあ」など、いろんなことが頭をよぎる。彼らに話しかけようかとも思うが、そんな余裕はない。面接までの間は貴重な時間。「ああ言われたらこう切り返そう」と、志望動機や司法試験からの転向した理由など、準備してきたことを頭の中で反芻する。
 10時前。自分の名前が呼ばれる。いよいよだ。人事院1人目の面接。公務員の早期退職が問題視されていることから、これについて聞いてみる。また、自分自身、採用された暁には面接官をやってみたいと思っていたからそのことについて語ったり、自分が受験した公務員試験、その試験制度に関わってみたいことをアピール。そして、案の定、志望動機のことについてはもちろん、「司法試験はもう諦めたの?」といった予期された突っ込みが……。ただ「諦めました」というのでは疑われる。それに「諦めた」じゃあ、「司法試験がダメだったから次善の策として公務員か?」と疑われる。そう思った僕は、司法試験を受験するに至った動機から公務員試験に転向するに至った経緯 をざっと話そうと決め、準備していたのだ。その甲斐あってか、面接官は納得してくれたっぽい。1人突破!そう確信する。終わったのが11時ちょい前。1時間近くも経っていたのだ。自分が感じている以上に時間が経つのは早い。
 もっとも、「1人突破!」と確信したとしても、それは僕が勝手に思いこんだだけ。面接終了後、待合室に戻る。次の人と面接させてもらえるか? それとも、「他の省庁も回ってみて下さい」みたいに言われ、人事院を早々に去らねばならなくなるか? とりあえず、最初の面接でどんなことを聞かれ、どんなふうに答えたのか、官庁訪問ノートにメモりながら時間を潰していた。
 11時30分。なんと2人目と面接することに!自分の名前を言った後、「どうぞお座り下さい」と言われ、座った直後に何の前振りもなく突然「志望動機は?」と。あまりに唐突だったため、頭の中が真っ白になりタジタジに(これは振りかえってみれば、官庁訪問中の面接でワースト3にランクインされるピンチだった)。その後は、普通に会話。「どういう問題が公務員試験としていい問題なのか?」「問題を公表しないのはなぜ?」といったことを話す。受験生としての疑問をそのままぶつける。12時15分終了。
 この面接はどう評価されたのか? 人事院とは「さようなら」になってしまうのか? この時間、待合室にいたのは僕一人。しばらくして、職員の方がいらして「他の省も回られるでしょうから、今日は結構です」と。えっ、これはもう「見込み」がないということ? もう来るなということ? そう思った僕は「人事院が第一志望なので、もし午後もどなたかと面接させて頂けるのであれば、そうして頂きたいのですが」と勇気を振り絞って言う。すると、「それでは14時にまたいらして下さい」と。やったー! まだ首はつながってる。
 14時まではまだ時間がある。そこで、人事院の次に回ろうと思っていた運輸省で、面接の予約だけでもしておこうと思い行ってみる。12時45分に到着。すると、初回は予約はできないとのこと。そこで、面接カードだけでも書いておこうと思い、記入する。広い待合室は人、人、人!受付番号は僕ですでに64番。人事院の待合室との差に唖然。待合室にいた受験生に話し掛けてみると、朝早くから来ていたのに未だに面接できないと言う。僕はすでに2人と面接していただけに、これまたビックリ。
 運輸省をあとにすると、交差点で渡辺ゼミ生に会う。彼女は運輸省で2人と面接したと言う。志望省庁間の関連性についてもかなり聞かれたとのこと。これについても事前に予想していたとは言え、現実にそういうことを聞かれたとなると、危機感はやはり高まる。僕は、人事院、会計検査院、運輸省、農林水産省をメインに回ろうと思っているから、突っ込まれたとき、どう言えば納得してもらえるのか不安に。
 13時40分。人事院に戻る。緊張のせいか食欲もない。しかし、何か食べねばと思い、食堂の方へ行く。すると、朝に会った衛視の方が「この時間、店やってないかもしれないな。ちょっと見て来てやるよ」と、店に。「一介の受験生にここまでしてくれるなんて……」「いいなあ、こういう雰囲気」と感極まり、ますます人事院に惹かれる。
 14時30分頃、3人目の面接開始。最初に「人事制度に興味はありますかね?」と。そして、司法試験のことをまた突っ込まれる。「1次試験はどうでしたか?」とも聞かれる。14時50分に終了。
 15時40分頃、4人目の面接開始。ようやく人事院での面接には慣れてくる。志望動機や司法試験のことについて淡々と答え、16時05分無事終了。明日また来て下さいとのこと。やったー!
 16時50分。人事院を出て、次の目的地、運輸省に。途中、友達と道端で会い、官庁訪問の様子をお互いに報告し合う。
 17時20分。運輸省に到着。昼過ぎにも増して、人だらけの待合室。初めての運輸省ということもあり、精神的にもやはり余裕がない。待合室には大勢の人がおり、すでに各地で受験生同士の会話が繰り広げられて騒々しくなっている。しかし、僕はあまり会話しない。「情報交換・おしゃべりは、とりあえず明日以降。今は面接対策。今日切られては、情報交換もクソもない」と。志望動機などを反芻。人事院モード切り換えて運輸省モード。
 時刻不明。数時間ののち、最初の面接(人事課)。そこでは、30分くらい、あれこれ話す。というより、話を聞いたと言うべきか。「話」と言っても、志望動機というよりはむしろ世間話っぽい感じ。「首都高は料金が700円ですごく混んでいて不評だよね。そこで3000円に値上げすればかなり空くだろう、ということで値上げするとしたら、きみはどう思う?」「普段1個300円のパンを、100個限定100円で売ることになって行列ができるようになりました。これをきみは平等だと思う?」「コンサートチケットが安いため、予約が殺到して電話予約しなきゃいけないけど、なかなか電話がつながらない。この状況をきみは平等だと思う?」などなど。これらの質問は、自由競争・市場原理に委ねずに価格を高くないし低く設定することは、消費者にとって平等と言えるか、そんな趣旨のことを聞きたかったためにされたものっぽい。知的好奇心を刺激される30分。この面接官とはもっと話していたいと思ったくらい。そして、そのときに次回の予約を入れることに。明日火曜日はもういっぱいとのこと。そこで、15日(水)10時20分に予約を入れる。
 待合室に戻ったのち、22時頃、2人目の面接。自賠責制度についてやっている方との面接。自賠責制度が新聞で取り上げられていたことは知っていたが、興味がなかったので読み飛ばしていたため、自賠責制度の何が問題となっているのか全く知らない。何も知らないことを伝えたところ丁寧に教えてくれる。しかし、自動車免許を持っているといっても自賠責のことなんて興味なかったから、会話がなんかスムーズに行かない。普通に会話しているのだが、どこかしっくりこない。人事院で4人の面接をスムーズに終えた後だっただけに、ものすごい違和感を感じる。自分が感じているほどには周りから見てギクシャクした会話ではないんだろうけど、どうしてもスッキリしない。そんな面接。この面接を通じて、ある一つの想いに至る。「本当に自分が興味があることなら、『一を聞いて十を知る』ではないが、一を聞いたら二、三、四と次々に疑問が湧いてきて会話が弾む。しかし、大して興味がなければ、一を聞いても一程度しか疑問が湧かず、普通に終わってしまう。あれこれ疑問が湧いてきて話が盛り上がる、そんなところが自分の行くべきところなんだろうな」と。
 スッキリしないまま、運輸省をあとにする。さて、これからどうするか?予定では農林水産省を回るつもりだったのだ。ホームページによれば受付時間が「官庁訪問者が終電で帰る時間まで」となっていた。そこで、「0時半の千代田線に乗れば間に合うな」「それに、早いうちに回らないと『第一志望が二つあって悩んでいます』みたいに言えないのではないか?」と思い、農林水産省へ足を運ぶことに決定。
 23時ちょい前。農林水産省へ。受付のある部屋の前に行くと廊下に数人椅子に座っている。「おおっ、こんな遅い時間に……」とビックリされる。担当職員の方から「今いる人を終電で帰すことで手一杯なので、申し訳ないんですがまた明日にでもいらして下さい」と。仕方なく家路に。
 0時20分。帰宅。
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