官庁訪問日記

M君の官庁訪問日記

6月15日(火) 官庁訪問2日目
 8時10分。人事院に到着。当初の予定としては、2日目の朝一番は第二志望だった会計検査院、午後に農林水産省を回れればいいなと思っていた。そうすれば4省庁を回れる。しかし、昨日、人事院で「明日来て下さい」と言われたことから、「脈があるなら午前中に行くべきか?」と思い、またまた人事院に朝一番に。こんな時間に受験生がいるはずもなく、昨日と同じくパンフの置いてあるそばの机で、人事院のパンフを読み、官庁訪問ノートを見る。昨日は誰とどんな話をしたのかを思い出しながらそこでどんな問答があったのか、面接官にうまく伝えられなかったことはどんなことだったのか、その原因は何だったのか……いろいろ洗い出す。こうして考えていると、自分の頭の中で漠然とモヤモヤしていたものが「ハッ!」とスッキリすることがあるのだ。昨日は何度も司法試験から公務員試験への転向の話や志望動機の話が多かった。志望動機はきちんと伝わったのだろうか? 司法試験を諦めたことも納得してもらえたのだろうか?当たり前のことだが、いくら一生懸命説明しても、相手に伝わらなければまったく意味がない。「何を」「どういう順番で」話していくかというのも非常に重要なのだ。同じ話を何度もしていると、その質問に対しては「これをまず話して次にこれ、そして最後にこれを話す」という一種の「パターン」みたいなものが浮かび上がってくる。それが僕の場合は「まず司法試験から公務員試験への転向のことを、次に志望動機を語れば、スムーズに面接官に自分の心境・状況を理解してもらえるのではないか」とおぼろげながらに感じたのである。これが「パターン」である。思いついたときはメモを忘れない。手で書くことによっても頭の中が整理されるからだ。
 そうこうしているうちに9時。待合室で待機。僕が最初に入り次にすぐ何人かやって来る。みんなお互いに話しかけない。待合室は静寂そのもの。昨日、受験生同士の会話で盛り上がっていた運輸省の待合室を見てきただけに、人事院の待合室の静寂さは余計に伝わってくる。ちょっと情報交換でも、と思い数人に話し掛けてみる。しかし、話し掛けてもみんな真剣そう。僕もそうだが。そこで、あまり話さず、ノートやパンフを見たりして想定される質問とその答えについていろいろ思い巡らすことにする。時間は過ぎる。しかし待っても待っても自分が呼ばれない。後から来た人は次々に面接室へ行くのに。
 10時40分。ようやく面接。人事院では5人目。開口一番、「もうすでに何人かと面接されてますが、どんな話をしましたか?」と。ノートにメモっといてよかった! 誰とどんな話をしたのかなんてバッチリ。さっきまで待合室でチェックしておいたし。ここまでは予定通り。しかし、その後の質問には度肝を抜かれた。「志望官庁に運輸省と農林水産省があるけど、人事院とはあまりつながりがないよね。これは公共事業だから?」に始まり、「野菜・果物ってそれほど輸入が多くなく、値段が高いよね。消費者からすると困ると思うんだけど、きみはどう思う?」「諸外国ではそれほど空港問題ってないと思うけど、なんで日本だけこんなに問題になるの?」というように、およそ人事院での面接とは思えない質問が次々に飛び出す。これには仰天。さすがに面接官も「ここは人事院だし、人事院のこともちょっとは話さないとね……」と、そしてようやく「賃金格差が小さい現行の給与体系についてどう思う?」という質問に。これについては準備していなかったので、「う〜ん、そうですねぇ……」と適当に間合いを取りながら、なんとか自分なりの答えをその場で考えて切り抜ける。11時終了。
 11時20分。6人目の面接。お決まりの「なぜ公務員? なぜ人事院?」の質問。「大学に6年間いたみたいだけど、修士?」(事実は2留)、「ホルンやってたんだね。楽器はやってたみたいだけど、スポーツは?」といった身の上話から、行政改革や、人事院と民間との接点はどんなところにあるのかといった話まで幅広くする。12時終了。
 待合室で待機。これからどうなるのかと思っていると、職員の方がいらして「明日また来て下さい」と。明日、運輸省に午前中行かねばならないことを告げると、午後でもいいとのこと。「明日15時に伺います」と約束。
 次に会計検査院に向かうが、その前に昼食。携帯電話で連絡を取り、友達(早稲田大学卒業。厚生労働省・郵政省・文部省・農林水産省を訪問中。僕と同じく元司法試験受験生)と農林水産省そばの交差点で待ち合わせ。途中、弁護士会館前に見覚えのある2人がいる。人事院の待合室にいた2人ではないか? やはりそうだ。彼らが話しかけてくる。「人事院で次回のこと何か言われた?」と。「明日、15時に行くことになってるけど」と答える。「そっか……」と2人。「こちらを回るかどうかはあなたの判断に任せます」と言われたとのこと。友達をすでに待たせていたので、2人には「申し訳ない」と言って数分で別れる。
 官庁訪問始まって初の友達との昼食。ホッとする瞬間。お互いの状況を報告し合い、励まし合って別れる。
 そして、会計検査院に向かう。歩きながらも「初の会計検査院の訪問。司法試験のことも聞かれるだろうし、志望動機も聞かれるだろうな」「なんで初日に来なかったのかなんて聞かれたら……ああ答えればいいのかなぁ」などなど、あれこれ考えていると歩いている時間もそれほど落ちつけるものではない。
 13時30分。会計検査院に到着。受付を済ませ待合室へ。面接カードの記入を始める。案の定、志望官庁を書く欄がある。とりあえずカードには、会計検査院、人事院、運輸省の順番で書いておく。ただ、自分の中の順位付けとしては人事院がやや上だったこともあり心が痛む。そこで、「面接で突っ込まれたときに、『人事院と会計検査院とはどちらにも興味があって、とても悩んでいます』と言えばいいっか」と思い、心の痛みを和らげる。
 13時40分。20分間くらい業務説明のビデオを見る。その後、面接カードの記入を再び続ける。
 14時35分。待合室に職員の方がいらして、パンフを使いながら業務説明。そのとき説明を聞いている受験生は4人。うち1人が説明している箇所とはまったく別のパンフを読んでいる。さすがに職員の方が「あの、そのパンフ、今使ってないんですけど」と。ちょっと「サムい」雰囲気に。
 15時10分。待合室で名前が呼ばれ、別室へ行く。そこで1人でしばらく待機。
 15時50分頃。会計検査院での1人目の面接が始まる。まず簡単な業務説明から始まり、次に質問するという形式をとることとなる。面接官から特に質問されなかった。話題も身の上話はなく業務のことのみ。「検査の実効性を担保する方法があまりないと思うのですが、検査に従事される方々はどのようにして自分の中で納得・満足するのでしょうか?」といった質問をする。16時40分終了。
 そのままこの部屋で待機するように言われる。その間、やはりノートに面接でのやりとりをメモする。しかし、落ちつかない。こことはさよならになるか、それとも次の面接を受けることができるのか。
 17時頃。2人目の面接官のノックする音。ホッとすると同時に再び緊張。今度は身の上話が多くなる。志望動機はもちろん聞かれる。そして、「なぜ会計検査院か?」という質問の際には、去年の11月の早稲田大学での官庁合同業務説明会のときには業務説明終了後に失礼ながらパンフだけもらいに行ったこと、そして帰ってからパンフを読んだら会計検査院に対して関心がわいたこと、その後の一橋大学での官庁合同業務説明会、霞ヶ関ツアーでは会計検査院を回ったことを話す。これがプラスになったのかはわからない。しかし、これらを通じて会計検査院のイメージができあがったことは確かだ。他に聞かれたことと言えば、「自己PRして下さい」「上に立つのがいいか、引っ張られるのがいいか?」「会計検査院の中で、どこの課に入ってみたいと思うか?」など。最後に「何か質問はありますか?」と聞かれたので、「会計検査院の職員には他省庁の公務員以上に特別に中立性が要求されると思うのですが、中立性を守るためにどんなことを心がけているんでしょうか?」といった質問をする。17時45分終了。
 そのままこの部屋で待機するようにまた言われる。面接でのやりとりをノートにメモしながら時間を潰す。しばらくしてノックの音。人事課の方に「明日水曜日の朝9時半にいらしていただけますか?」と聞かれる。「すみませんが、明日は午前中に運輸省の予約があるのですが」「午後はどうですか?」「人事院に行かなければならないのですが」「では、明後日木曜日の朝9時半はどうですか?」「それなら大丈夫です」ということになり、17日木曜日に会計検査院に行くことに。「他省庁の予約があることを告げると相手の気分を害するのではないか?」「『ここが第一志望なら他省庁を断ってでもうちに来るのが普通じゃないか?』と言われるのではないか?」といった心配はひとまず杞憂に終わる。そしてなんとか生き残れたことにホッとする。
 21時半頃。帰宅。
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