官庁訪問日記

M君の官庁訪問日記

6月24日(木) 官庁訪問11日目午後
 13時30分。会計検査院に行き、受付を済ませる。待合室へ行くと、先週初めて会った渡辺ゼミ生に再び会う。彼女は会計検査院は初回訪問だったよう。官庁訪問が始まって2週目も半ば過ぎになるが、この時期でも初回訪問の人も会計検査院には結構来るようだ。
 13時45分。別室へ案内される。
 14時30分頃。会計検査院9人目の面接。業務説明が中心のものだったと記憶するが、具体的内容についてはあまり覚えていない(注:この官庁訪問日記は官庁訪問ノートのメモをベースに書いているのだが、この面接に関しては何も書いてないから、どんなやりとりがあったのかよくわからないのだ)。15時30分終了。
 16時。会計検査院10人目の面接。表情が結構恐そうな感じの面接官。「なぜ公務員を目指すのか?」と聞かれる。これに対しては、今まで通り「社会的・経済的に弱い立場にある人、自由競争では救われにくい人のために働きたいと思って……」と答える。すると、すかさず「公務員は弱者のためだけに働いているのではない。国民全体の奉仕者なのだ。その辺を勘違いしてもらっては困る!」と最初から厳しいお言葉。続いて「現行のキャリアシステムについてどう考えるか?」と。先週、人事院で似たような話をしたのを思い出す。人事上不利に扱われた人が納得できるような客観的な基準があれば能力主義を強調することもできるだろうが、そのような客観的な基準がない以上、劇的な変革は難しい面があるというような答えをする。すると、すかさず「会計検査院では他省庁と違って、国 l で入った人も国 ll で入った人も、同じ調査官として机を並べて同じ仕事をするんだよね。そうすると、できのいい人と悪い人が比較的客観的にわかってしまうんだよ。現行のシステムでは国 l の人は国 ll の人より早く昇進することになっている。だから、国 l で入った人が仕事ができないというようじゃあ困るんだよね。君は大丈夫なの?」と、またまた厳しいお言葉が……。最後に「君は人事院と会計検査院とどっちを選ぶ?」「すごく悩んでいます」「あのね、もし君と同じくらいの位置にいる人がいれば、会計検査院を第1志望にしている人を選ぶんだけどねえ」とボソっと言われる。16時30分終了。
 嘘でも「会計検査院が第1志望です!」と言うべきだったのか? 「もしもこの面接で最後になってしまったのだとしたら……」と思うと、後悔せざるをえない。このときの心境としては、月曜日の人事院での面接もなんかしっくり来なかったことだし、人事院と会計検査院とで先にいい返事をくれる方があるのであれば、そこが一番だという雰囲気になっている。もともとは人事院の方が優先順位が若干高かったが、10人もの面接を経て、会計検査院の仕事の面白さも徐々に伝わって来て、「どちらで働くことになっても後悔することはない」というレベルにまで達したからだ。こういう場合は、「どちらも第1志望」ということで、気を利かせて「会計検査院が第1志望です!」と言ってもよかったのだろうか? しかし、より正直になればどちらにするのか悩んでいる状況なのだ。その悩める姿をそのまま言ってしまったのだが…。極力嘘はつきたくないという思いがとうとう禍する日が来てしまうのだろうか。
 17時。ノックの音とともに面接官が入ってくる。まだ首がつながっていたのだ。会計検査院11人目の面接。ここでも予想外の質問が出てくる。「あなたの志望官庁である人事院や会計検査院はどちらかというと横断的な官庁だと思うのですが、大蔵省や総務庁も横断的ですよね。なぜそちらは回らなかったのですか?」と。この質問にはちょっと戸惑う。しかし、人事院や会計検査院を回ろうと思うに至った気持ちを思い出せばなんのことはない。「公務員に対する信頼を取り戻したいという観点から、人事行政に関わる人事院や、国民の税金の使途をチェックする会計検査院を志望したので、大蔵省や総務庁は回らなかったのですが」と答える。何も考えずに人事院と会計検査院を回っていたのだとしたら、恐らく沈黙になったことだろう。続いて、「面接カードに書いてある関心のある社会の出来事は、公務員の志望動機と関係はあるのですか?」と聞かれる。面接カードには、コソボ紛争や印パ紛争、北朝鮮問題と書いたのだ。自分の中ではこれは志望動機と何の関係もないのだ。そりゃ、何とかすればこじつけられなくもないが、それは自分の気持ちに反する。そこで、「志望動機とは特に関係ないです」と正直に答える。他に「公務員と民間の違いはどんなところにあると思う?」と聞かれる。これに対しては、「世の中には自由競争社会では救われにくい社会的・経済的弱者がいますが、その中でもその人が真に救うべき弱者なのか、それとも表現は悪いですが泣いてもらわなければならない弱者なのか、その辺を判断できるのが国家公務員だと思うのですが……」と答える。17時25分終了。
 どうなったのだろうか? しばらくすると、ノックの音。明日13時半に来て下さいとのこと。明日は最終面接の一歩手前くらいの面接らしい。「11人にも会ってまだ一歩手前なのか!?」と思うと同時に「よくここまで生き残れたなぁ……」とホッとする。
 その後帰宅。
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