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Y君の官庁訪問日記

6月14日(水) 官庁訪問3日目
 10時予約のA省に9:30到着。人事の前には既に10人ほどの列ができている。隣の人に聞いてみたら、皆9:30の予約らしい。月曜日にA省で失敗したことから、もう2軍扱いなのだろうかと不安になる。予約の時間が早いほうが評価が高いとの判断基準があるからだ。たかが1回の面接でそんな扱いになるのだろうか、いや、でもうまく話せなかったしなぁ、と余計なことばかりを考えてしまう。待合室に移動し、官庁訪問ノートを読み返し、月曜日にA省で聞いた話を反芻する。11:30に人事に呼ばれ、簡単に月曜日にどんな話を聞いたか、その感想を求められる。ここが挽回のチャンスなのに、「今まで知らなかった話を聞けました。大変勉強になりました」などというどうでもいい答え方をしてしまい、「知らない話ばかりなのは当たり前なんだから、そこからなにを感じたか、考えたかを話してもらわないと」と相手も苦笑。いたって感触が悪い。やることすべてが裏目に出てしまっている。
 紹介された原課に向かう。今度の相手は入省2年目の方。官庁訪問では会う相手の役職によって自分の評価が大体わかると言われている。一般的には係長→課長補佐(→室長)→課長というふうにプロセスが進んでいくものだ。話をしてくださる職員の方には大変申し訳なかったが、私は既に切られたも同然なのだろうか……と落ち込んでしまった。しかし、今は業務説明をよく聞いて、全力で自分をアピールするしかないと思い、またA省で最も興味のある局の説明だったので、積極的に質問した。そして、気になっていることを思いきって質問してみる。「官庁訪問のプロセスとしては、今後、役職や年次の上の方に会うようになるんですよね?」と。すると、「一般的にはそうだけど、1回や2回会っただけでその人を評価できるわけじゃないから、僕が役職なしだからといって君の評価が低いとかいうことじゃないし、気にすることはないよ」と言われた。年の近い、若い年次の方ということもあり、話を聞くときはノートをとるよりも聞くことに集中して、待合室に戻ってから記入したほうがいいなどアドバイスをいただくことができた。面接は25分で終了。時間が短いのも気になる。
 待合室に戻り、ノートに記入する。「年次が若いのを気にすることはない」といわれたし、ネガティブになるのはよくないと思いながらも、やはり気持ちが後ろ向きになってしまう。昼食に外出すると、雨が降っていてますますブルーに。14時前にようやく人事に呼ばれる。人事の係長に先ほど聞いた話を伝え、自分なりの問題点を提示し、その方策について話した。すると、その問題点を中心とした政策の話になり、自分の意見を求められた。ここまでくると想定問答集の範囲で答えられる質問ではない。そこで、日頃、新聞などで得た知識や自分なりの問題意識を総動員し、考えながらもうまく切りぬけることにした。相手もそれなりに納得してくれた様子で15分ほどで終了。次回の予約を16日金曜日の9:30にした。今日の結果を総合すると、A省での私の評価は低いように思った。こうなったらBC省とD省に賭けるしかない。
 15:30予約のBC省に14:20到着。隣に座った人と話をしてみる。官庁訪問中は長時間待たされることがしばしばなので、自分のノートやパンフレットを読んでいても飽きてしまうものだ。そんなときに周りの人と話をすると、「一緒に闘っている」仲間としての連帯感からか話は弾むし、他省庁の情報を得ることにもなるので一石二鳥だ。彼の話によれば、Y省では「1次合格発表後に来てください」とみんなに言っていたり、X庁ではすでに絞込みが始まっていて、切られた人も囲われている人もいたりするそうだ。官庁訪問3日目にして他省庁ではそんな状況なのか、と驚く。ただ、官庁訪問中に聞く話は、もちろん正確な情報もあるが出所不明のデマも多いので、いかに自分なりに取捨選択をして判断をするかが大事だ。彼に聞いた話は直接自分に関係がなかったので、Y省を回っている友人にあとで確かめようかと思った。
 17時を過ぎて、私より後に来たはずの彼が先に呼ばれる。周囲でもそのようなことがあるらしく、疑問に思った学生が職員に尋ねると、「B省とC省の説明を交互にしているため、今日B省の話を聞く人は長く待たせてしまって申し訳ありません」といわれていた。確かに月曜日にC省の説明を受けた私は、今日はB省の説明を聞くはずだ。18時を過ぎても呼ばれる様子はなく、ついに官庁訪問開始初の夕食タイムに突入する。30分後に戻って来てくださいとのことなので、BC省地下の食堂へ。
 待つこと6時間半。21時にようやく私の名前が呼ばれた。案内されたブースに向かうとそこには3月の霞ヶ関ツアーでB省の人事課長補佐と紹介されていた人物が……。そう、BC省は業務説明といいながらもブースに何人かの人事職員を潜りこませていた?のである。当然、業務説明になるはずもなく、質問攻めに遭う。どういう仕事がしたいのか、専攻・サークル、自分の性格をアピールしてみて、彼女はいるの?霞ヶ関に入るにあたって不安に思うことはある?イヤな仕事もできるか、アルバイトをしたことはあるか、などなど、とにかく聞かれた。この課長補佐は予想しない質問をすることで有名らしく、友人は「君の一芸を披露して」と言われたらしい。相手はなぜそんなことを質問するのかというと、用意していない質問にも慌てずその場で考えて、自分なりの考えを話せるかどうかを見ているのではないかと思う。わざわざ貴重な時間を割いて、無駄なことを話すわけはないのだから。私もその場で充分に考えて答えたつもりだが、いまいち相手の反応が読めないまま30分で終了。
 A省での評価を期待できなくなったことから、力点をBC省にシフトしようと考えていたので、15日木曜日の15:30に予約する。21:30に家路につく。12時間の長丁場で疲れたが、初めて「官庁訪問らしい」夜の帰宅だ。
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