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Y君の官庁訪問日記

6月16日(金) 官庁訪問5日目
 今日で官庁訪問第1週も終わりになる。3つの省庁に絞ってまわったが、今のところどこの省庁ともつながっている(A省はかなり危うい状態だが)から、とにかく今日の面接を精一杯がんばって、来週につなげよう。週末は休みだし。今日はA省とD省にいくことを予定している。まずは予約があるA省に向かう。
 9:15、A省到着。そして、いつも通り待合室へ。9:50、自分の名前が呼ばれ、人事の職員と面接。相手は一昨日の面接でそっけなかった例の人だった。運が悪いなぁ…と思いながらも、そういう思いが顔に出ないように気をつける。「今日の昼は何を食べる予定ですか?」といきなり質問された。前に説明を受けた話を聞かれるのがいつものパターンだったので少々驚くが、まぁたわいのない(?)質問だったので軽く答える。すると「今日はいい人にあってもらいます。リサイクルの法案作成に最近まで関わっていた人だから、面白い話をいろいろ聞けると思うよ」と。なんだか雰囲気が良い。水曜日までの、どこかちぐはぐな会話ではない。本当に面白い話が聞ければいいなぁとか、この雰囲気の良さは何なのだろうとか思う。
 10:10に紹介された原課の部屋へ。頂いた名刺には「総括課長補佐」の文字が。役職が上がった…。というわけで、課長補佐(10年目?)にお話を伺う。今までの面接では職場で話していたが、今回は省内の喫茶店で面接になった。A省の仕事の中でも私の興味があることだったし、質問すれば相手も自分の考えをいれながら説明してくれたので、話が弾む。試験勉強をしているときに新聞やニュースで吸収した知識だけでは思いつかないような視点から話をしていただいたので、まさに目から鱗が落ちる状態だった。さすがに課長補佐ともなると話が興味深く、また勉強になる。喫茶店での話が終わり、職場に戻りながらも、「行政の仕事は民間と違って、顧客のニーズに合っていなくても残ってしまう。だからこそ、事前事後の政策評価が今後大事になっていくんだ」等々、大変熱心に話していただいた。A省で初めて感動したこの面接は50分で終了。
 待合室に戻ると、昨日、D省で会った渡辺ゼミの人ともう一人のゼミ生に会った。そこで、彼らのA省での対応や他省庁の動向を探るべく、話をする。A省ではだいたい同じような人に会っているようだ。3人が会った人の役職もばらばらだったので、役職によって評価が違うというのはデマなのかなぁとその時は思う。彼らは他省庁でも順調なようで、私のBC省での話も聞いてもらう。そうしているうちに、人事に呼ばれる。今回は、月曜日の朝一でがちがちに緊張しながら話した人だった。まず、「今日でA省の業務説明も3日目だけど、イメージはどう?」と聞かれる。今日聞いた話を膨らませつつ答える。その後は、相手から政策のことについて質問され、自分の考えを求められる。その場で考えながらうまく切りぬけようとしたが、畳み掛けるように質問されたので、答えに詰まることもしばしば。それでも、なんとか20分ほどで終了。すると「じゃあ、午後、もう一人会ってもらおうかな」といわれる。月曜日、水曜日と一人しか会えず(それは他の人も同じだったが)、さらにお世辞にもうまくいっていたとはいえないA省で一日に2人と会えることになるとは思わなかったので、顔がほころぶ。いくらBC省に賭けると決めたとはいえ、やはり私の第1志望は今でもA省だ。
 昼食をとった後、待つこと2時間近く、14:30に再び人事に呼ばれる。「じゃあ、今日の2人目は海外勤務や地方勤務などいろいろな経験をした人だから、また面白い話が聞けると思います」と。紹介された部屋は会議室。今までとは何かが違う…。部屋に入ると、何組か面接をしている。これは明らかに違う。今回の面接の相手はなぜか人事の課長補佐(12年目)。A省もBC省と同じで人事を混ぜているのか。それならば今回が勝負になるな、と自然と身体に力が入る。まずは簡単に今までの経歴にそって、話をされる。話の途中、「A省の国際交渉における主張では弱いのでは?」と質問すると、「それはなぜかな?君だったらどういうふうに交渉する?」と逆に聞き返されたりもする。ひと通り説明が終わると、「志望動機は?」「A省でしたい仕事は?」「サークルは?」「体力はあるほう?」など質問される。また、技官との仕事の関わりについても話される。この「勝負」と思われる面接は15:30に終了する。今までの業務説明だけの面接とは違い、人事である相手からいろいろ質問されたということは、自分の評価が変わったのだろうか。それにしても一昨日とは扱いが違いすぎる。安心しすぎないように、次の面接に備えるため官庁訪問ノートに話をまとめる。
 待合室で待っていると、昼に会った渡辺ゼミ生とまた一緒になった。彼も人事の課長補佐に会ってきたという。彼によると、他にも何人か似たような状況の人がいるようだ。ただ、彼は私と違って業務説明だけだったということだったので、面接の担当者によって内容は違うらしい。「これってどういうことなんだろうね。そろそろ絞込みが始まっているのかなぁ」と2人で話し合う。待合室で3時間が経過した頃、再び人事へ呼ばれる。いつも通り、今日聞いた話について感想を聞かれる。特に印象に残った午前中の話を中心にして、2人の方の話によってイメージが膨らんだことを話す。そして、次回の予約を入れることに。相手からは「まぁ、君は月・水・金って来ているから、来週も同じパターンになるかな」といわれる。ここで、私は迷った。確かにA省は第1志望で、今日の扱いから考えれば少しは評価されているのかもしれない。しかし、人事の課長補佐に会っている人は他にもいる。BC省の予約が月曜の朝にあるし、ここでA省だけに絞るのは危険だろう。そこで「じゃあ、来週は火曜日にします」と伝える。すると、「他の予約でも入っているの?」と聞かれた。素直に「はい。BC省に朝いくことになっています」と答える。続けて「でも、A省が第1志望ですから、月曜日の朝しかないということでしたら、BC省を断ってA省に来ます」と相手に選択を迫るという、少々、大胆かつずるい手段にでた。さて、相手の反応はどうだろう…。「う〜ん、じゃあ、ちょっと外の椅子に座って待っていてください」といわれる。いったいどうなるんだろう…と自分の言動を少し後悔しつつ待つ。45分待たされて出された結論は、「来週月曜日、BC省が終わり次第、来てください」ということになった!作戦成功。官庁訪問も5日目になり、駆け引きができるようになったもんだと自画自賛。帰る途中、昨日BC省で仲良くなった人に会ったが、彼は人事の課長補佐に会えずに、予約が水曜日になったとのこと。いろいろな段階の人がいるのだと実感。A省における評価の激変に頭がついていかないものの、やはりうれしい。
 それでも他省庁へのフォローも忘れず、D省に今日伺えなかったことを謝りにいく。しかし、D省は業務説明期間は17:00までしか受けつけていないらしく、門前払い。まぁ、今日はA省で手応えがあったからいいか…と19:30に霞ヶ関を後にする。こうして波乱万丈の官庁訪問第1週目は終わった。このとき、2週目はもっと波乱が起きることを予想もしていなかった。
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