Y君の官庁訪問日記
9:30予約のA省に、9:20到着。9:50に人事に呼ばれる。簡単に原課を紹介されただけだった。昨日から気になっていることがある。人事の課長補佐3人のうち、私は今のところ2人しか会っていない。一方、私の友人を含めて、3人全員に会っている人が少なからずいる。彼らはその後、どういう経過をたどっているのだろうか。私は彼らに比べれば遅れをとっているのだろうか。A省で好反応を得ながらも、悩みは尽きない。
10:00に原課到着。今まで説明を聞いたことがなく、かつ事前にそれほど研究してこなかった分野だ。そのため、この分野はよく知らなかったので、勉強するためにお話を伺いに参りました、と素直に相手の総括課長補佐(10年目)に話した。官庁訪問では学生に細かい業務知識を求めているわけではないが、最低限の知識は必要だ。しかし、時にはこういった謙虚な姿勢も大事になるのではないだろうか。もっとも、私はA省に先週から通い詰めて、ある程度共通する課題を見つけられつつあったので、よく知らない分野でも話を聞いているうちになんらかの疑問点が浮かんでくるのではないか、と思ったのだ。話を聞き始めたときは一方的にうなずくばかりだったが、予想通り疑問点が浮かんできたので、後半は積極的に質問することができた。説明を受けてみるとけっこう面白そうな仕事で、A省で働くことになったらここで仕事をしてみてもよいかな、とまで思えた。面接は短めに35分で終了。自分なりに充実した面接だった。
11:15、人事に再び呼ばれる。例の係長に説明を受けた話の感想を求められる。初めて聞いた話だが、聞きながら思いついた問題点を話す。相手はもちろん私が提示した問題点に対する反論?をしてくる。そして、切り返す私。こういったやりとりには、随分とうまく対応できるようになった。官庁訪問自体に慣れてきたせいもあるが、A省の行政課題に対する自分の問題意識がだいぶ育ってきたという面もあるように思う。10分で一旦終了。その後、「では、もう1人の方に話を聞く時間はある? 面接カードに書いてある、興味のある仕事の中から、この分野の人に連絡をしてみるから」と言われる。ん……? ということは、原課だろうか。予想通り、紹介されたのは原課の総括課長補佐(8年目)。うーん、なかなか3人目の人事課長補佐に会えない。不安に思いながらも、原課に向かう。
11:30、原課到着。確かに興味のある仕事で、官庁訪問が始まった当初から聞いてみたかった分野だ。初日に話を聞く機会があったものの、緊張のため精神状態はぼろぼろ、ほとんど話を覚えていない有り様だったので、今回はいい機会だ。ところが、相手から出た最初の言葉は「うん、実は僕もまだ4月に異動してきたばかりで、学生さんに話をできるほどじゃないんだよね。だから、政策について話してみようよ」というもの。これにはかなり驚いたが、いろいろな業務経験を積んだ方ならではの悩みや問題意識、方法論など幅広く伺えた。私も政策の企画、立案に対する疑問点はかねてからあったので、それをぶつけることができた。40分で終了。
その後、待合室に戻り、昼食をとる。待合室ではいつものメンバーで現状を報告しあう。A省で人事の課長補佐に会ったという友人は、その後、以前のように原課の課長補佐にあっているという。次の段階があるというわけではないのか。考えてみれば私も2人に会ってからは原課が続いている。ということは、彼とだいたい同じ段階にあるのだろう。もっとも、3人目にあっていないということが気がかりだが。彼は第1志望の他省庁に切られてしまったということで、私同様、A省にいくつもりだという。第2週目の後半にもなるとさまざまな理由で回る省庁が限られてくる。いつまでも迷っているよりは、ここに行くと決めて、決めたところに熱意を示すのが得策ではないだろうか。私の場合、迷う余地がなくなってしまったということもあるが、もともとA省が第1志望なのだから熱意を示すのはたやすい。採用側も自分のところに必ず来るという意志がはっきりわかる学生のほうを採りたいと思ってくれる、と信じて。
16:00前に人事に呼ばれる。聞いた話の感想を求められるが、なにしろさきほどの話は抽象的な政策論だ。話を具体的にするために、今までの話を総合して話をする。すると、話題が国内意見集約と国際交渉とのジレンマや、マスコミと行政との関わりについて発展してしまう。特に、マスコミとの関係では相手の質問にストレートに答えることができなくて、久々に冷や汗をかく。面接は10分で終了。次回の予約を入れることに。既にA省に心を決めた私は、「明日も是非伺いたいと思います。A省が第1志望なので」と相手にはっきりと伝えた。「じゃ、明日もお待ちしてます」ということで、23日10:00に予約。
しかし……。今日もいろいろな話ができた、明日もがんばろう……と家に帰ろうとしたところに、「これから会うと今日3人目だよ」という言葉が耳に入る。最近、待合室でよく見る人の言葉だ。私は2人目で返されたが、彼は3人目に会えるという。さらに、エレベーターに向かう途中で会った顔見知りには、「噂では課長補佐より上の人に会っている人がいるみたい」と聞かされる。確かに、人事の人に付き添われて原課らしき部屋に向かう人を見かけたことがある。普通ならば自分一人で原課の部屋に向かうのだが…。これが次の段階なのだろうか。私の現在の位置はいわゆる「2軍」ということだろうか。帰りぎわに心を乱されるものを多く見聞きしてしまい、多いに不安になる。明日は積極的に攻めていかないとまずいだろう。いろいろな思いを抱きつつ、16:10、霞ヶ関を後に。
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