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Y君の官庁訪問日記

6月23日(金) 官庁訪問12日目
 2週目の最終日。すなわち業務説明期間は今日で終了となる。1次合格発表後に官庁訪問が開始といいながらも、省庁ごとにさまざまな対応をしていた今年の(実質的)官庁訪問もクライマックスを迎える。昨日、帰り際にA省で目にしたいろいろなシーンが思い浮かぶ。今の自分が有利な立場なのか、不利な立場なのか。それをよく見極めて有終の美を飾りたいものだ。
 9:40、A省到着。既に10人ほどの列ができている。その中には、ここのところ待合室でいつも話をしている渡辺ゼミの友人もいる。並んでいると、「今日は何時頃まで残っていられるか記入してください」と紙が回ってくる。こんなことは始めてだ。ということは、今日はかなり遅くまで残されるのだろうか。大体の人が「何時まででも」と記入している。私も迷わず同様の文句を書きこむ。そして、待合室に移動。いつも通り、友人と2人で話す。私が昨日の帰りに見たシーンを伝えると、彼もそういう話を聞いたらしく、お互いがんばらないとまずいねと暗いムードに。人事に人が呼ばれ始める。ところが、いつもと状況が違う。早く来た人から人事に呼ばれるはずが、今日は順番がめちゃくちゃだ。友人も私も順番通りにいけば呼ばれてもいいはずなのに、まったく呼ばれない。朝から帰宅時間を書かせる紙が回ってきたことといい、今日はなにかが違うという雰囲気だ。
 12:00を過ぎた頃、友人が呼ばれる。なにがあるかわからないが、がんばって〜と送り出す。12:30、昼食の時間になる。今さら外出する気にもならずに、省内の売店でパンを購入した。なにもなければないで不安になるものだ。緊張をしているわけでもないのにあまり食が進まない。それから何時間待っても、私の名前はまったく呼ばれない。そうしているうちに午後になると、待合室のメンバーが朝とは顔ぶれが違ってくる。その中に私と同じように朝からいるのに呼ばれない人も何人かいるようだ。「おかしい」「おかしい」という声が方々で聞こえ始める。さすがに私もうんざりし始めた15:20。実に6時間近く待って、ようやく人事に呼ばれた。「今日はなかなか呼ばれないからいつもと違うとは感じているでしょう。あとで、重要人物に会ってもらいたいんだけど、なにかと忙しい方で時間があかないので、場つなぎに聞きたい話があれば1人会ってもらおうと思うんだけど」といわれる。重要人物とはもってまわった言い方だ。おそらく私が会っていない3人目の人事課長補佐なのだろうと思うが。待合室で待つのにも飽きたので、業務説明を聞いて勉強しようと思い話を聞くことにした。
 15:35、A省で唯一業務説明を受けていない局の課長補佐(13年目)に話を伺う。相手がとても話好きの方だったので、いろいろな話を聞くことができた。業務説明の中では自分がA省でやりたい仕事も絡めて日頃から思っている疑問を解消する。また、日々の業務について裏話?まで教えていただいて、いつもの面接とは違う和やかなムードで、最長の1時間で終了。長時間待たされていたせいか、話せないフラストレーションがたまっていて私のほうも随分と饒舌になっていたようだ。
 待合室に戻る。他省庁を終えてA省に来ていたもう1人の友人がいたので、他の状況なども聞いてみる。彼はW省で好評価をもらっているようだが、A省では苦戦しているとのこと。やはり、複数の省庁でよい評価を受けている人は少ない。それでも、2〜3ヵ所からぜひ来てくれと言われているという人もいて、羨ましい限りだ。ただし、今の私はA省のことを考えるしかない。友人に、今日のいつもと違う雰囲気について話すと、彼もそれを感じているらしい。W省でもなにか動きがあったということなのだ。さすがに2週目の金曜日ともなると、どの省庁でも動きがあるようだ。
 18:00、再び人事に呼ばれる。「さっき話したように、重要人物に会ってもらいます。行き先はここです。他の人にはわからないように行ってください。誰にも言わないでください。面接が終わったらいつもの待合室ではなく、こちらの部屋に行くように」という念の入れようで、ある部屋を案内される。違う。これは人事課長補佐ではない。部屋に向かいながら、期待と不安が入り混じる。その部屋は薄暗いところにある小部屋だった。ノックをして中に入ると、机とイスが一組。そして、初めて見る方がいた。私が椅子に座るなり、「A省で2週間話を聞いてきて、あなたの感想や思ったことを話してください」といわれる。ただならぬ雰囲気にこの面接の重要性を感じ取った私は、今まで聞いた話から思った問題意識や共通する行政課題などを具体的に話した。抽象的にならないように、業務説明で培った説明能力を充分に発揮しようと心がけて。その後は、簡単に相手から質問される。公務員の志望理由、他の志望省庁とA省との違い、試験の出来。D省で何度となく答えてきた質問ばかりだったので、緊張しながらも無難にこなすことができた。すると「では、待合室は聞いているだろうから、そこに行って待っていてください」とのこと。相手の名前や役職がわからないまま、部屋を出る。正味10分の短い面接だった……。
 いつもとは違う待合室に向かう。そこは迷路のようになっている奥にある部屋だった。ドアを開けると、4人の人がいた。その中には、昼過ぎにがんばれ〜と送り出した友人もいた。彼にどういうことか聞くと、私同様、小部屋で面接をした後ずっとこの部屋で待っているという。他の人もだいたい同じような感じだった。その後、ずっとその部屋で待つことになる。友人と、他にも部屋があるかもしれないとか話しつつも、やはり朝の不安な気持ちに比べればだいぶ楽になったと思う。多少の疑問はあるものの、これはいわゆる「囲われた」ということではないか。雑談をしながら待合室でひたすら待ちつづける。21:00を過ぎると、その待合室に来た順番に名前が呼ばれる。結局その部屋には私を含めて5人しかいなかったので、私は最後ということになる。
 21:45、指示された部屋に向かうと、人事の方がいた。そこでは、第1志望の再確認や、発表日の朝一にA省に来ることを約束、「官庁訪問になってからも第1志望でいてくれれば、いい結果になります」といわれる。これを額面通りに受けとめれば、1軍入りということになる……!そのまま内々定につながるわけではないのだろうが、やはりうれしい。思えば、昨日の帰り際から今日の午前中までずっと不安に思っていた。しかし、最後には状況が好転していたのだ。ここまでたどりついたのだから、1次合格発表を待つのみだ。心地よい疲労感と充実感で満たされ、22:00前にA省を後にした。
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