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国際法インサイト
 このコーナーは、ASIL Insight ( http://www.asil.org/insights.htm )の記事をピックアップ、抄訳したものです。国際法の学習は、国際社会のトピックスにあわせて行っていく必要があります。このサイトを、基本書や判例集がフォローしていない最新の重要判例・事例を補っていくのに活用してください。
 
第7回 世界貿易センターとペンタゴンへのテロリストの攻撃(2001年9月)
フレデリック・L・カージス
翻訳・要約 杉原龍太
http://www.asil.org/insights/insigh77.htm
 9月11日の民間航空機のハイジャックとそれに続く世界貿易センターとペンタゴンへの意図的な衝突について責任を有するものが確認され逮捕されるならば、その身柄を拘束しているいかなる国においても彼らは訴追される。

 さらに、広範に批准されている航空機不法奪取ヘーグ条約によって、航空機のハイジャックは国際刑事犯罪とされている。それは共犯者にも適用される。条約は、すべての締約国に犯罪行為に対して、以下の場合、自国の裁判権を設定するために必要な措置をとることを要求する。すなわち、犯罪行為が当該締約国において登録された航空機に対し又はその機内で行われた場合、或いは機内で犯罪行為が行われた航空機が容疑者を乗せたまま当該締約国の領域内に着地する場合、或いは容疑者が現に当該締約国の領域内に存在し、かつ上述の他の締約国にその身柄を引き渡さない場合である1。当該犯罪行為は、締約国間で効力を有する犯罪人引渡条約における引渡犯罪とみなされる2

 ハイジャックされた航空機の死の兵器(lethal weapons)としての使用は、数千人の死者をもたらした点で、国際法上の人道に対する罪となるだろう。国際刑事裁判所規程(発効に必要な批准国数を集めている途中だけれども)は、人道に対する罪を「文民たる住民に対して行われる広範なまたは組織的な攻撃の一部として、攻撃であることを了知して行われる」いくつかの列挙された行為として定義する。当該行為は、殺人や「重大な苦痛または身体もしくは精神的もしくは肉体的な健康に対して重大な傷害を故意にもたらす類似の性格のその他の非人道的な行為」を含む3

 国際刑事裁判所規程は効力をもっていないけれども、人道に対する罪に匹敵するテロリストの行為は、世界中の国内刑事裁判所で訴追されなければならないものだ。米国は、その国境のなかで発生するテロ行為を禁止し、すでに発効した反テロ連邦法に基づいて犯罪行為を訴追するための慣習国際法上の管轄権を有する。他の国も、いわゆる普遍的管轄権を行使しうる。これは、いかなる国もこのようなテロ行為が国内法上も刑事犯罪とし、その管轄下に容疑者がいれば訴追することができるという意味である。

 国連安全保障理事会は、過去にも裁判のためテロ容疑者の引渡しを求めたことがある。それは、スコットランド・ロッカービー上空のパンナム機爆破事件の容疑者引渡しをリビアに強制するために課された制裁、及び米国その他テロ活動容疑で起訴されてきた他国に対するウサマ・ビンラディンの引渡しを強制するためアフガニスタンに課された制裁である。

 米国とその同盟国が、9月11日のテロリストの行為に責任を有する者をかくまっている疑いのある国に対して対抗措置をとるならば(とるとき)、国際法上の争点が生まれる。争点は、特に対抗措置が武力行使の形体になるかどうかに集中するだろう。武力復仇は、国連憲章上(米国もその当事国)は紛争の平和的解決が強く強調されている点からも疑問の声が強い。とはいえ、憲章51条は、「国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利」を承認する。したがって、武力行使と同等な燃料を積んだ大型旅客機のハイジャックと世界貿易センター及びペンタゴンへの攻撃のための使用は、米国に対する武力攻撃と分類しうるならば、また、これ以上の攻撃を防ぐために武力の行使を含む対抗措置をとることが必要であれば、安保理が国際の平和と安全の維持のために行動することができるまで、異論はあろうが、米国は憲章51条の下で武力を用いることができるであろう。

 北大西洋条約(NATO)加盟国は、同条約5条を援用して、米国に対する武力攻撃が発生したとの理解を表明した。5条は、NATO加盟国に国連憲章51条の個別的・集団的自衛権の行使として被害国を援助するよう要請する。しかし、同条は、とるべき措置を特定していない。措置は、武力行使を含むことができると言える。

 もし、世界貿易センターとペンタゴンへの攻撃について責任を有する当事者が、テロリストが活動する国の政府でないならば、その国に対して損害を生じさせる武力行使が合法か否かという問題が生じる。国連憲章は、このような事態を想定して起草されていない。51条の原則が政府がテロリストを了知してかくまっているような場合にも拡大しうるか議論のあるところだろう。

 自衛におけるいかなる武力行使も防衛の武力行使に比例したものでなければならない。
 
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