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国際法インサイト
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第8回 安保理決議1377及び1378(2001年12月)
Carsten Stahn
翻訳・要約 杉原龍太
http://www.asil.org/insights/insigh77.htm#addendum9
 安保理決議1368(2001)と1373(2001)は、様々に解釈されている。ある人は、安保理が自衛のケースの存在を公式に是認したものだ、あるいは憲章第7章の下に自衛の行使を容認(authorize)したものだと主張し、またある人は、より制限的な立場から、国際の平和安全の維持のための措置をとる安保理自身の準備について言及したものだ、あるいは米国に向けられた攻撃に対して憲章51条を適用可能なものと宣言したものか疑わしいという。この点は、安保理決議1377・1378により、さらに明確になる。

 9月11日の攻撃が自衛の権利に結びつくものかどうか、そしてどのように結びつくか、安保理は明示に認定することを避けている。安保理は、「国際テロ行為が憲章の目的・原則に反する」と強調する(決議1377の第5項参照)が、それが「武力攻撃」に相当するものかどうか特定していない。ノルウェー代表は、決議1368が「自衛の権利を発動した」ものという見解をとっている。しかし、決議1368の文言(「憲章に則った個別的及び集団的自衛の固有の権利を承認する」)は、決議1377や1378には現れていない。

 安保理は、決議1378の前文第2項で「テロリズム根絶のための国際的努力」を支持すると表明している。しかし、決議1373の第5項の前例につづいて、この節は、同決議の効力のある部分に設けられていないし、憲章第7章とも直接には結びつけられていない。続いて明示の容認(authorization)が欠如している点で、アフガンに対する攻撃は、朝鮮やイラクに対する軍事的措置とも区別される。したがって集団的安全保障の文脈で正式な根拠がないのであれば、憲章51条の枠組みの下で実施された自衛の措置とみなすほかないであろう。

 次に不明確な点は、安保理決議1368の第4項(安保理は「9月11日のテロリストの攻撃に対処してあらゆる必要な措置をとる用意があることを表明する(expresses its readiness to take all necessary steps to respond to the terrorist attacks of 11 September 2001)」)及び決議1373の第8項(安保理は「憲章に基づくその責任に従って、本決議の安全な履行を確保するためにあらゆる必要な措置をとる旨の決意(determination)を表明する」)が、憲章51条の第2文に含まれる制約の観点からアフガニスタンに対する武力の行使を排除しているものと解釈しうるかどうかである。

 同文は、自衛権の行使が「安保理が国際の平和安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもこの憲章に基づく権能及び責任に対してはいかなる影響も及ぼすものではない」と述べる。安保理の表明に、決議1378の前文第2項で「国権憲章に則ったテロリズム根絶のための国際的努力」への支持が与えられれば、決議1368と1373から引用したパラグラフが自衛権を停止しようとしたものではないことはいまや明らかである。

 同時に、米国が実施する攻撃の方法が合法的なものであると安保理が公的に承認したかどうかは疑問である。「国連憲章に則った」という文言の意味はあいまいである。それは武力行使に訴えることの一般的承認として解釈しうるかもしれない。しかし、もうひとつの妥当な読み方は、安保理がアフガニスタンに対する措置の合法性について最終的な判断を与えたのではなく、承認が当該措置の国連憲章との両立性にかからしめられているというものである。後者の読み方は、安保理内部での審議からも裏付けられるものだ。安保理内部では軍事的措置に対する広範な支持があった。とりわけ、EU加盟国や中・東欧諸国のような多くの西側諸国が、アフガニスタンに対する攻撃が「正当なものであり、かつ憲章と安保理決議1368の文言に則っている」ものとみなされると公に述べている。しかし、安保理加盟国のなかには、攻撃の比例性の評価に関連した懸念を表明する国もあった。一例を挙げれば、安保理決議1378採択の前日に述べたマレーシア代表の声明がある。

 「軍事力の行使は、自衛行為として措置が行われるかぎりで正当であって、それは単に、最も効果的で、あるいは政治的に賢明な措置の経過というわけではない。不幸なことに、テロリストの攻撃の背後にあると信じられている者のグループとその庇護者を罰する過程で、貧しく長く苦しんできたアフガニスタンの人々をさらに苦しませてしまうだろう。…あらゆる空爆の際に、正確に予想された空爆であるにもかかわらず必ず発生するであろう、いわゆる副次的損害に我々は深い懸念を有する。それゆえ我々は、むしろ報告されている文民の多くの死亡者を招いている現在の軍事的キャンペーンにおける誤爆の限界に関心を抱く。それゆえ我々は、長く苦しんできたアフガニスタンの人々にさらなる困難と苦悩を与えないためにも、また彼らが早足でやって来る冬とラマダンに備えて村と故郷に帰還できるようにも、空爆をやめるよう訴える」。

 エジプト代表の声明も似たような方向に進んだ。「エジプトは、アフガニスタンにおけるタリバン体制に対して、米国が軍事力に訴えざるを得ない動機と正当性を理解する」と述べる一方で、「罪のないアフガンの文民にいかなる被害も与えないような懸命かつ専心されている努力の重要性」を強調する。

著者について
Carsten Stahn.
マックス・プランク比較公法・国際法研究所リサーチ・フェロー
 
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